暑い夏の外出時、スーツやジャケパンを楽しむことと、涼しくすることは両立が困難です。
手持ちの扇風機や、首に押し当てる簡易クーラーは昨年流行りましたが、やはりビジネスマンには使いづらいものがあります。
去年の7月、SONYが主宰するクラウドファンディングサイトで、そんな問題を解決できるかもしれない「REON POCKET」というガジェット(というか服?)が掲載されました。
なんでも、下着がクーラーが代わりになり、体を冷やしてくれる……というものです。
これは人柱せねばと思い、早速投資。無事プロジェクトは成立し、先日現物が届きました。
一般発売はまだですが、本当に涼しくなるのか、使い心地はどうか、ファッション上は問題無いのか等々、レビューしたいと思います。
※ トップ画像はREON POCKETの公式サイトから引用
1.REON POCKETの概要
そもそもREON POCKETって?
△ 出典:REON POCKET公式サイト
REON POCKETは、SONYの社内ベンチャーが製作したインナー(下着のシャツ)に装着するクーラーデバイスです。
ペルチェ素子とファンで、背中を冷却する事が出来ます。また、冬場用に温めることも可能。
利用するには、REON POCKETを収納できる袋がついた、専用のインナーが必要です。
公式サイト:https://first-flight.sony.com/pj/reonpocket
クラウドファンディングの概要
△ 出典:REON POCKET公式サイト
クラウドファンディングは、SONY主宰のFirst Flightというサイトで昨年(令和元年)7月頃にスタートしました。
私が当初投資したのは、REON POCKET本体にインナー5枚がセットになったものです。
風量調整機能や自身の動きに合わせて設定が変わるオートモードなどがついたスタンダードモデルと、単機能のライトモデルがありましたが、前者を購入しました。
合計で19,030円。かなり高めですが、これで夏や春先のスーツスタイルを涼しく出来るのならと、人柱精神でポチりました。
当初は白色のみでしたが、ベージュのシャツも遅れて登場。こちらも追加で2枚購入しました。
一般販売について
現在のところ、公式サイトでは一般販売に関するアナウンスはありません。
ネット上でも、ソースが明確なサイトでの記載は見当たらないため、一般販売までもう少し時間はかかりそうです。
専用のイベントが開催されるなど、力を入れているプロジェクトのようで、今回の製品に問題が多くなければしっかり発売されると思います。
製品化への応援という意味合いもありますが、発売されない製品の人柱レビューをやっても意味は無いですよね^^; 恐らくされるだろうという推測の元、この記事を書いています。もう暫くお待ちください。発売されなかったらごめんなさい。
一般販売開始しています。AmazonやRakutenでも購入出来る様になりました。
2.製品外観レビュー
投資(昨年7月)から8ヶ月。ようやく到着しました。
First Flightのロゴ入りテープです。
左が当初注文したREON POCKETと専用インナー5着、そしておまけのケース。右が追加注文をした、肌色のインナーです。
専用インナー
まずはインナーから確認していきます。
REON POCKET専用インナーです。
ポリエステルが90%、ポリウレタンが10%と、オール化繊です。
製造元は東レとのこと。
3サイズ展開。後述しますが、ポリウレタンにかなりの伸縮性があるため、迷ったら少し小さめを買った方がよいです。
Vネックなので、シャツの第1ボタンを開けて着る際も、下着が見える事はありません。
ここがREON POCKETを入れる部分です。
縫い目。そこそこの品質です。
REON POCKET本体
それでは、肝心のREON POCKETを開封します。
紙製のシンプルな箱に入っています。
小さめのマウスほどの大きさ。
左から、REON POCKET本体、充電用ケーブル、スタートガイド、保証書です。
保証期間は1年。正直、クラウドファンディングの製品で1年間の保証がしっかりつくとは想像していませんでした^^;
保証書は他のソニー製品と一緒で、扱い的には製品版なんでしょうね。
背中に入れるということもあり、かなり扁平な印象です。
△ 出典:REON POCKET公式サイト
クラウドファンディング初出時の製品写真がこちら。途中で若干デザインが変更されています。
左の穴は充電用ポート。右のボタンは操作用スイッチ兼インジケーターです。
この製品はスマホからの操作を基本としていますが、一部このスイッチから動かすことができます。
排気口の上に見えるのが、体に熱を伝えるシリコンパッドです。
充電はUSB typeCです。
充電を開始したところ。約2時間半で満充電になります。
3.着用外観レビュー
当サイトはガジェットではなくファッションがメイン。
ということで、着用感のレビューに移る前に、この装置を使うとどの様な見た目になるのかをチェックします。
写真で確認
背中の部分です。
本体の重みは約90g。数字上は軽いのですが、専用インナーの素材にポリウレタン(伸縮素材)が入っていることもあり、重みでこんなに落ちます。
実際には、シリコンパッドが体に密着し、若干ですが落ちにくくなります。ただ、体を動かすと、ご覧のように自重でずり落ちてきます。
従って、サイズ選択で迷ったら、少し小さめを選んでおくと良いと思います。
横から見た盛り上がり具合。
REON POCKETは薄手ですが、下着の状態であれば入っているのは一目瞭然です。
シャツを着せてみます。
そうですね……。気をつけてみると分かる程度でしょうか。
ウェストコートを着用すると、ほぼ分からなくなります。
とはいえ、上に重ねれば重ねるほど通気性は落ちるため、冷却性能は悪くなると思います。
なお、白いシャツを着る場合は透けやすいため、インナーの色は肌色をオススメします。
感想
見た目ですが、カジュアルな薄手のシャツでは目立ちやすいかも知れません。
逆に、スーツなど衣服を重ねるスタイルでは、ほとんど目立たなくなります。
とはいえ、衣服を重ねると通気性が悪くなり、冷却性能は下がるというトレードオフにはなりますが……。
(HOTモードで使うのであれば通気性の確保は不要です。)
4.試運転
充電が終わったので、まずは単体で動かしてみたいと思います。
用意するのは、スマホとREON POCKETのみ。
REON POCKETアプリの導入
今回はAndroid端末を使います。
まだダウロード数は少なめです。。。
ペアリング
インストールしたアプリを開くと、ペアリングの方法が分かりやすく表示されます。
ものの数秒で完了。
設定
メイン画面がこちら。
電池の残量、冷却強度、ファンの出力などを設定できます。
上に「COOL」「WARM」のタブがありますが、こちらで冷却モードと加温モードを切り替えます。
実際に起動してみる
冷却モード
それでは、最低出力で起動してみます。1に設定すると、自動的にファンが回り始めました。(ファンの回転速度は、冷却の出力とは独立しており、自由に設定できます。ただし、冷却モードではOFFにできません。)
簡易サーモグラフィを使って確認していきます。
最初28度ほどあったREON POCKETが……
スイッチを入れた瞬間から徐々に冷却されていくのがわかります。本体の上部に立ちのぼっているのは、廃熱です。
最終的に23度くらいに落ち着きました。
通常、この手の製品は手で触るとその部分が温められ、手の跡がサーモグラフィーに残ることが多いです。しかしREON POCKETは、しっかり冷えるためか、残らないか、すぐに手の跡は消えてしまいます。
23度というとあまり冷えていないように思えますが、体温と10度以上差があるうえ、その温度がしっかり維持されることもあってかなり冷たく感じます。
ちなみに、最高設定には「ブーストモード」というものがあるのですが、2分限定です。
ブーストモードを使うと、21度まで下がりました。
なお、撮影に使用した簡易サーモグラフィは以下の通り。興味がある方はご覧下さい^^;
FLIR(フリアー)【国内正規品】iPhone/iPad用 FLIR ONE Pro 19200画素 1年保証 赤外線サーモグラフィ メーカ...
加温モード
この製品の面白いところは、冷却だけでなく加温モードもあるところです。
タブを「WARM」に設定すると、画面のデザインが暖色に変わり、加温モードだと一発でわかります。
最低の「1」で40~41度くらい。
3にすると45度近くまで上昇します。
5.使用感レビュー
それでは、実際に使ってみて、感じた点をいくつかご紹介します。
なお、使い方は至って簡単。
専用インナーを着た状態で、REON POCKET本体をインナーのポケットに背中の上から入れ、前項のとおりスマホから起動するだけです。
ポジティブな面
まずは、使ってみて良かったところ。
効果は結構大きい
今回は部屋をエアコンで暖め、その中で使ってみました。
冷却されているのは一部ですが、確かに涼しさが感じられ、汗が引いていくのが分かりました。
また、予想外だったのは暖房モードが良いこと。背中が温められて血行が良くなるせいか、肩が軽くなりました(本来の使い方とは違いますが^^;)。
暑い時期の客先訪問、炎天下を歩いて到着したのは空調のない無風のロビー。到着すると、蒸し暑さと体の火照りからじわり出てくる汗。こんなときにREON POCKETがあると救われるかも知れません……。
性能は力強い
今回、簡易ですがサーモグラフィーを使って動作検証を行いました。結果、予想外に力強い動作をする製品だと感じました。
先述しましたが、少し触った程度では、(体に触れる)シリコン部分の温度はほとんど変わりませんでした。また、実際につけていても、常に冷たいor温かい状態が維持されました。
装着しやすい
製品説明を読んだ段階では、かなり装着が面倒なのではと危惧していましたが、実際にはとても簡単でした。
ただし、タイドアップしている場合には、一度ネクタイを緩め、シャツの第1ボタンを開く必要があります。
ネガティブな面
続いて、ネガティブ面(要改善点)を見てみます。
インナーの着心地が悪い
私が天然素材信者なのもありますが、合成繊維100%はやはりキツいです。
肌への刺激が強く、少しかゆくなりました。
REON POCKETのポジションがズレる
これも着心地に関連しますが、インナーの伸縮性が高すぎるためか、自重によりREON POCKETの位置が下がってしまいます。
背中に、なにか重たく不安定なものをぶら下げている……。そんな感じでしょうか。
サイジングは難しくなりますが、もう少し伸縮性を落とし、装着感に安定性を持たせた方が良いのでは? と思います。
30分で自動OFF(強制)
安全性に考慮してか、30分で自動的にOFFになります。
そして、ONにするためにはスマホのアプリから再度指示を出すか、REON POCKET本体のボタンを押す必要があります。
これは設定で自由にさせてくれないでしょうか……。
電源はOFFに出来ない
これは冗談のような本当の話です。(公式のFAQに書いてあります。上の写真はそれ。)
製品は常にペアリング先のスマホを探し続ける仕様になっています。
△ 出典:REON POCKET公式サイト
従って、仕様表には「動作時間」とは別に「充電池持続時間」なる項目が。そして、その長さは24時間です。
つまり、満充電をしても、何もしないと1日で放電しきってしまうわけです。
通常のリチウムイオン電池は充放電500回程度が寿命ですから、電源をこまめに切って寿命を延ばす――という使い方は出来ないわけです。(そしてつまり、使わないとき以外は、充電器に挿しっぱなしと言う事ですね。満充電も電池に良くないんですけどね……^^;)
6.買いかどうか
使い方がマッチすれば買い
製品版の仕様がどうなるか不明ではありますが、現行版でそのまま販売されるとすると、「使い方がマッチすれば買い」だと思います。
その使い方とは、「自宅~駅、オフィス~客先など、短時間の移動時における涼を得る」というもの。
最弱のCOOLレベル1でも稼働時間は4時間、しかも連続稼働30分で安全装置のため自動OFFとなります。
したがって、オフィスの暑さ対策など、長時間の利用には向いていません。
一方、性能自体はかなり強力ですので、スポットで使う分にはかなり有用だと思います。
課題はインナー
そもそも、超小型のREON POCKETに、(安全装置の30分自動OFFはともかく)稼働時間の短さを批判するのは筋違いかもしれません。
一方、インナーについては、充分改善の余地有りです。
多少値段が上がっても良いので、REON POCKETが落ちづらく、もう少し皮膚への刺激が少ない素材で作れないものでしょうか。
綿100%は難しいですが、レーヨンなども上手く利用して、肌触りが良くかつ伸縮性に優れるもので製品化されることを期待したいです。
というか、自然派素材にこだわりかつ縫製も上手なグンゼと組んで作ってくれると嬉しいのですが^^;