皆さんは普段どんなベルトをしていますか?
筆者はスリーピースにブレイシーズ(ズボン吊り、サスペンダー)というパターンが多いのですが、それでもツーピース時やジャケパン時には、靴や服に合ったベルトをします。
今回は質問箱宛に複数の方から、ベルトについて採り上げて欲しいとのメッセージを戴きました(ありがとうございます)。 本サイトでは殆ど触れたことの無いパーツでしたので、まずはベルトの選び方や手入れ、買い方などの概要的な部分を中心に考えていきたいと思います。
1.ベルトの目的、存在意義
本題に入る前に、ベルトは何のためにあるのかを考えます。
ベルトには、①ズボンの位置を固定する、②道具を取り付ける、③装飾、という3つの基本的な役割があり、これは有史以来あまり変わっていないようです。
もともとスーツのズボンはブレイシーズで吊したわけで、スーツにベルトはありませんでした。一説によると南阿(ボーア)戦争や第一次世界大戦の復員兵によって、軍服のベルトをルーツとして、スーツのツーピース化と共に広まったようです。
①ズボンの位置を固定する
ベルトの最も基本的な役割に見えますが、個人的にはこの役割をあまり重要視していません(重要視したくありません)。 と言うのも、ベルトで締め上げるとズボンのシルエットが不格好になる上、ズボン/ベルト共にとても傷みやすくなるからです。
出来れば、ジャストサイズのズボンをはき、ベルトはあまり締め付けない様にします。
②道具を取り付ける
士官のベルトにはサーベルや拳銃が、兵卒のベルトには銃剣や弾嚢など、重い物を取り付けるために用いられてきました。一方、サラリーマンでもかつてはポケベル、現代はスマホがベルトに取り付けられているケースがあります。
仕事上必要な場合はやむを得ませんが、やはりベルトやズボンが傷む原因になるほか、相当研究しないと格好良く見えないことから、この役割をベルトに担わせるのはお薦め出来ません。
③装飾
やはりスーツをツーピースで着用した際、ベルトが無いとしまらないですよね。 この理由、筆者の中では今のところ「スーツの終端には装飾が必要」という仮説で落ち着いています。
たとえば袖口。シャツを覗かせないと落ち着きませんよね。 ほかにもズボンの裾。靴が存在感を見せているはずです。 そして襟。シャツの襟がジャケットの上襟(カラー)の外側に出ていないと不格好です。
この様にスーツの終端には殆どの場合装飾がありますが、ベルトもズボンの終端の装飾として考えると話が繋がります。スリーピース時代には無かった終端が、スーツのツーピース化に伴って必要とされてきたのでは無いでしょうか。
従って本稿は、ベルトの役割は装飾である、という視点に立って進めていきたいと思います。
2.材質
ビジネス用途として使えるベルトに、主に用いられている材質と、その特徴を考えます。
スムース(銀付き)革
ビジネス用のベルトとしては最もポピュラーな種類です。身につける革製品(カバンや時計のバンド、そして最も重要なのは靴)と材質を合わせるとコーディネートに統一感が生まれるため、一般的な革靴であればスムース革を選びます。
一枚革で作られた製品は分厚く無骨なイメージがありジャケパンに向き、貼り合わせで作られたものはしなやかで薄いため、ドレス向きと言えます。
茶靴を買ったとき、手持ちのベルトに似た色味のものが無ければ、ベルトも同時に購入すると良いでしょう(多くの靴屋ではベルトも扱っています)。
スエード革
スエード靴には、スエードのベルトがお薦めです。靴との色あわせがスムース革以上に難しいので、お気に入りのスエード靴と色味が似ているベルトを見つけたらすぐ買う様にしています。
メッシュ素材
少しドレスダウンしたいときや、夏場の清涼感を出したいときにお薦めです。主にゴムや革を用いて編み込まれて作られます。編み目や隙間が大きいほどカジュアルに見えやすいため、ビジネス用途としては細めのゴムメッシュか、編み目が目立たない革メッシュが合うと思います。 また、どの位置でもとめられるので、買いやすい素材です。
そのほか、綿、ビニール、各素材の混合(コンビ)などがありますが、ビジネス用途としては不向きなので割愛します。また、バックルについても次回以降改めて採り上げようと思います。
3.幅
ビジネス用途に耐えうる紳士用ベルトは、厚みにもよりますが、だいたい2.5センチ~4センチです。 この中のどの幅でも良いわけではなく、ベルトの幅は見た目に大きく作用するため、見極めが重要です。
上の写真は右が3センチ、左が3.3センチのベルトです。僅か3ミリの差なのですが、同じズボンに通してみると、結構印象が変わります。
下のベルトの方が、かなり幅広に見えるのでは無いでしょうか。(写真だと少し分かりづらいのですが、実物はかなりの差が出ます。)
ベルトは長いものですから、僅かな幅の差が、表面積に大きく影響します。また、最適なベルトの幅は、ご自身の体格、ベルトの材質や厚みとも関係するので、気に入ったサイズの物が見つかるまでは、店舗の姿見などを活用して、何度も試着を試してみて下さい。
4.長さ
適正サイズ
通常の穴が空いているベルトであれば、真ん中の穴(5つ穴なら3つめ、3つ穴なら2つめ)で留めたときに、ズボンを締めつけもせず、隙間が空いてバックルが下を向きもしない位のものがジャストサイズです。
表記
ベルトにもサイズがあります。ベルトのバックルや裏の部分に「34/86」などと記載があれば、それがそのベルトの長さを表しています(この場合は34インチ=86センチ)。
但し、この数値は、ブランドによってどの部分の長さなのかが異なります。多くはバックルから真ん中に位置する穴までの距離を表していますが、バックルから一番遠くの穴、バックルからベルトの先端まで等々、異なるブランドもあります。
従って、初めてのブランドや、返品が難しい通販のときには、実店舗で試着した方が良いでしょう。
サイズ修正
ベルトには自身でサイズ修正できる物と、固定サイズの物の2種類があります。
上の写真はサイズ修正できるタイプの物です。バックルがクリップ状になっており、バックルを外した状態でベルトをはさみで切って短くすることが出来ます。
購入する際にサイズを気にしなくて良く、またリバーシブルに使える場合もあるため便利な機能です。ただし、耐久性が若干劣るなどのデメリットもあります。
一方こちらは自分で調節が出来ないタイプです。バックルがベルトに縫い付けてあるため、ジャストサイズの物を買う必要があります。 ただし、靴修理店の一部では、ベルトのサイズ調整を実施してくれるところがありますので、上手く活用しましょう。
5.手入れ
最も重要なのは連続して着用しないことです。ベルトは思った以上に汗を吸い込んでいます。水分を含んだベルトは非常に劣化しやすく、カビも生えやすいです。出来れば中2日以上開けて、ローテーションさせて下さい。
定期的な手入れについて、革製の物であれば、手入れは革靴のそれと同じです。ただし、靴墨を使いすぎると、ズボンやスーツ、椅子などに色が移るので、出来ればレザーローションなどの利用にとどめた方が良いでしょう。
6.収納
ズボンに装着したままの方も居るかも知れませんが、コーディネートやベルト通しの傷みを考えると、個別に保管することをお薦めします。
かつてはベルト掛けなども使っていたのですが、最近は見やすくて嵩張らず、種類別に重ねて保管でき、メッシュ構造で通気性も良いアイリスオーヤマのコンテナボックスを使っています。
7.ベルトのブランド
いただいた質問の中に、お薦めのベルトのブランドを知りたいというものが有りましたので、最後に買って良かったと思うブランドをご紹介します。
ジャベツクリフ(JABEZ CLIFF)
ジャベツクリフはイギリスの馬具メーカーです。一枚革を使った無骨なベルトで、手入れをすれば数十年は持つでしょう。
ウィークエンドのジャケパン用として最適です。(といっても、チャッカブーツとセットでスーツに合わせることも有りますが……。)
私は革や革の匂いが大好きなので、お気に入りの一つで、3色揃えてしまいました。
リンク:公式サイト(無し)、Amazon
レグロン(L'AIGLON)
レグロンはフランスのメーカーです。価格も比較的リーズナブルで、メッシュベルト好きの人には知る人ぞ知るブランドです。
夏場は、かなりの割合でメッシュベルトを利用しています。涼しげに見えますし、実際ムレないので非常に快適です。
以前は銀座田屋など輸入衣料品店でしか扱いが有りませんでしたが、現在では東京丸井やアマゾンなどでも購入出来る様になっています。
ダンヒル(dunhill)
ダンヒルは実は馬具屋が出自ということで、ベルトには結構力を入れています。ベルトの革質は当然良いのですが、特徴はそのバックルです。
これでもかというほど多数のバックルがデザインされており、その殆どが高品質です。また、変にブランド臭を漂わせないプレーンなデザインが多いことも気に入っている理由の一つです(もちろん、「ダンヒル丸出し!」や、「おじさん臭!」なデザインも有りますが……)。
ダンヒルのベルトはビジネスユースを想定したものが多く、スーツにお薦めです。また、サイズが自分で調節できるタイプが殆どです。
ノーブランド
靴屋や一部のテーラーで売られている、ノーブランドやファクトリーブランドのベルトは、実は一番のお薦めです。特に靴屋のベルトは革質はピカイチの高コスパですし、縫製も靴の縫製技術に裏打ちされているので間違い無しです。
先述しましたが、茶靴を買うときに近い色のベルトも一緒に買っておくと、後々コーディネートが楽です。(場合によっては同じ革で作られたベルトを置いてあるところもあり、似た様な色味のベルトを持っていても、購入の誘惑に駆られてしまいます……^^;)
8.おわりに
項目数が多くなり、読みづらくて申し訳ありません&最後までご覧下さいまして、有り難う御座いました。
やはりベルトのことを一つの記事で扱うのには無理がありますね……。また機会を改めて、バックルや服の素材とのあわせかた等について考えて行ければ良いなと考えています。
それでは。