皆さんは、
ポリエステル素材の入った服を持っていますか?
かつては価格を下げるために多用されたポリエステル素材ですが、
現在では機能性素材(清涼素材)、形状記憶素材、発色を良くするためなど、
ポジティブな方向でも多用されてるようになっています。
今回採り上げるのは、そんなポリエステルが混紡されている形状記憶シャツについてです。
形状記憶にすることで、アイロンが要らないか、または軽くかけるだけで良くなるため、
自宅で洗濯でき、安くかつ手間がかからず、一人暮らしの方に愛用者が多いようです。
しかし、ポリエステル混紡の形状記憶シャツにはシビアな欠点があるため、
本当に自分に合った素材なのかを、確認する必要があります。
今回は、そんなポリエステル混紡の形状記憶シャツについて、
その功罪を考えてみたいと思います。
I.ポリエステル混紡形状記憶シャツのメリット
- アイロン掛けの負担が少ない
- すぐに乾く
- 縮まない
大まかに、ポリ混形状記憶シャツのメリットは3つに分かれます。
アイロン掛けの負担が少ない、については、シャツの作られた目的そのままで、
自宅で洗濯後、アイロン掛けが要らないか、または少しかけるだけで綺麗になります。
脱水しきらず、若干濡れた状態で陰干しするのが綺麗にシワを取るコツです。
2番目のすぐ乾くについては、ポリエステル混紡素材ならではです。
吸水率が低いため、すぐに水が蒸発します。
1番目とあわせて、単身者に嬉しい機能ですよね。
3つめは、水を通した後に、サイズが変わりにくいことです。
天然繊維、たとえば麻などは袖丈で最大1~2センチ程度縮みますが、
ポリエステルは殆どそういったことがありません。
生地の素材感も、最近のものであれば、
店に売られている状態、またはオーダーであればバンチの状態を見る限り、
かなりよく出来ており、一人暮らしに嬉しい、一見良さそうな素材に見えるのですが……
II. ポリエステル混紡形状記憶シャツのデメリット
- 見た目の耐久性が低い
- 暑くて蒸れる
- 風合いが悪い
一方で、以上のデメリットもあります。
2つめの「暑くて蒸れる」は、ポリエステルの吸湿率の低さ故で、
メリットの「すぐに乾く」と表裏一体のため、メリットが全て消し飛ぶほどではありません。
また、3つめについては、綿との混紡で最近の生地ならば結構改善されてきました。
最大の問題は1つめの「見た目の耐久性が低い」です。
ポリエステルそのものはとても強く、本来は耐久性が高い素材です。
耐久性を高めることを目的に、混紡することもあるのですが、
美しい見た目を保てるか、を耐久性と考えると、少し違ってきます。
この写真は、ポリ50%、綿50%で出来ている、形状記憶のシャツです。
衿の部分を写した画像なのですが、
黒いポツポツが見えるのが分かりますか?
これは、
生地と肌が擦れたことによって出来た、
ポリエステルの繊維の「毛玉」です。
衿の縁の部分にフォーカスすると、少し毛羽立っているのが見えるでしょうか?
これが毛玉の元になる、ポリエステル繊維の毛羽立ちです。
ポリエステルの弱さは、一般に高温であると言われますが、
私としてはこの毛玉になりやすいところが、最大の弱点だと思っています。
この毛玉は、主に擦れることによって起こるため、
衿や袖、脇はもちろん、デスクワークの多い方は、袖の裏側、背中なども頻出ポイントです。
この水色のシャツは、ファーストエクスペリエンス(Sur Mesure名義)で作った物で、
10回も着ていないものですが、こんな状況です。
比較のため、同社で同時期に作り、ほぼ同じ回数着用した、綿100%のシャツを見てみましょう。
毛玉はおろか、毛羽立ちも見当たりませんよね。
III. 本当にリーズナブルなのはどちらか
クリーニング代を節約するため、形状記憶のポリ混シャツを導入したとします。
しかし上記の結果は、本当に節約になるのか疑問を呈す形になりました。
たとえば、10回でみすぼらしくなるポリ混素材のシャツと、
20回着ることの出来る綿100%の、いずれも金額が同じシャツがあるとします。
着用1回あたりの費用を計算すると、以下の通りです。
■ ポリ混シャツ
\7,000 ÷ 10 = \700
■ 綿100%シャツ
\7,000 ÷ 20 + \200 = \550
※ クリーニング代を\200として計算
実際には、生地の混紡率、織り、生地の薄さなどによって、
10回、20回などと決められるものではないのですが、
毎回クリーニングしたとしても、必ずしも高くつくわけでは無い事が分かると思います。
一人暮らしで毎日終電、
休日出勤もあってクリーニングへ出す暇も、アイロン掛けをする暇も無い……
そんな方であれば、ノーアイロンの形状記憶は十分選択肢に入ると思います。
しかし、クリーニング代を節約したいからと、(かつて私もそう考えた時期がありました^^;)
安易にポリ混の形状記憶に手を出すと、
想定したコストメリットを得られないかも知れません。
一方で、綿100%の形状記憶なら……
という声も聞こえてきそうですが、
綿100%では、完全なノーアイロンは難しいと思います。
また、極端に糸を強く撚ってあったり、密度が高かったりで、
とても厚手で、かつ擦れに弱い生地であることが多く、
こちらもあまりお薦めできません。
忙しいサラリーマンの方は、
通勤途中のコンビニで出せるようなクリーニングサービスを探すか、
少し値は張りますが、車で集荷に来る、宅配クリーニングがお薦めです。
それでは。