スーツスタイルのサラリーマンは毎日革靴を履いていますが、突然の雨に降られてしまうことは良くあることです。前回の「1:雨の日にはどの様な革靴を履けばよいか」で選んだ靴ならまだしも、晴天用の靴で雨が降ったときのために、何か対策が出来ないか考えてみようと思います。
全3回を予定している「雨と革靴について考える」は以下のような構成を予定しています。
第1回:雨の日にはどの様な革靴を履けばよいか
第2回:通常の革靴の雨予防 (今回)
第3回:雨に降られた後の処置
今回は2回目として、革靴の雨予防を取り上げます。
■「雨対策」のポイント
前回、雨に濡れた靴はどの様な問題が起きるか、以下の3つに絞って考えてみました。
(靴底)多量の水分を吸い込むと柔らかくなり、革底の減りが激しくなります。
(靴底と甲革の縫い目)雨が縫い目から靴の中に浸入してきます。
(甲革)雨の浸透による革の変色と、乾燥後の塩分析出によって、外観を損ないます。
それぞれ、どの様な対策が有るのでしょうか。
(靴底)水分吸い、革底が減る
いくつか対策方法が有りますが、一つは「革底にオイル塗ること」です。古くはミンクオイルなんかを塗ったようですが、滑りやすく危険なため、最近ではソールトニックが販売されています。これだけでは完全に水を防げるわけではありませんが、革底の減りは遅くなります。
もう一つは、前回合成底の革靴をお薦めしたように、ソール(靴底)を合成底に張り替えたり、市販されているような滑り止めゴムを貼り付ける方法が有ります。後者は特に手軽で良いのですが、外観を損なったり、履き心地が悪くなるデメリットがあります。
個人的には、革底が薄くなった靴を、ダイナイトソールに交換し、雨雪用の靴として使用するのも有りだと思います。(特に、ポリッシュドバインダーの靴(≒ガラス靴)など)
(縫い目)靴の中に水が浸入する
一般的な高級靴に見られる、甲革と革底を糸で縫い付ける靴の場合、縫い目からは水が浸透してくることがあります。
良く採る対策としては、靴の手入れを行う際に油性ポリッシュを縫い目部分に多めに塗布することで、水を弾くという方法です。使わなくなった歯ブラシでポリッシュをとり、ごしごしと塗り込みます。
(甲革)変色や、水分が乾燥後の塩分析出
コレの対策としては、そもそも水がしみこまないように防水スプレー・防水クリームを塗布する、あるいは油性ポリッシュを塗る等の方法が有りますが、基本的に革を傷める事が多いため、注意が必要です。(スプレーはシリコン製ではなくフッ素系など革靴専用の物を使うなどの注意が必要です。)
また、油性ポリッシュは幾ら塗りたくったところで最初は雨を弾きますが、1時間も雨に降られれば浸透してきます。裏技として登山用の防水ポリッシュなどもありますが、ひび割れを起こす危険性があるため、柔らかい革にはお薦めしません。
したがって事前に雨を想定している雨用靴に、防水グッズやポリッシュの全面塗布は有効だと思いますが、晴天用の靴には、「適度な油分を欠かさないようにする(=手入れをこまめにする)」ことと、「ぬれた後しっかり拭き取り」「正しく乾燥させる」ことが大事だと考えています。
水を吸った後の手入れについては、次章で詳述します。
ちなみに、靴の手入れのたびに「防水スプレーをかける」と解説しているサイトや雑誌がたまにありますが、革を傷めることになるため余りオススメしません。
■まとめ
以上をまとめると、以下のような予防措置が有効であると考えられます。
- ソールトニックを使用し、革底に耐久性を持たせる
- 革底にゴムを張ることで、水の侵入を防ぐ
- 油性ポリッシュをソールの縫い目に塗りつける
- 非シリコンの防水スプレー・防水クリームを使う (←雨用靴にお薦め)
- 油性ポリッシュを薄く甲革に塗る (←雨用靴にお薦め)
- こまめな手入れで油分を補充する (←お薦め)
この中から必要な物を選択して対策をすると良いと思います。
ただ、個人的には最後の「こまめな手入れ」と前回の主題である「雨用靴割り切り」が一番有効であると思っています。日頃の手入れでいざというときに備え、雨が降りそうなときや降雨を事前に把握しているときには雨用靴を履いて被害を抑えます。
※裏技として、「オーバーシューズ」を使う方法があります。これは、靴の上から靴の形をしたゴム(オーバーシューズ)を履かせ、雨や雪に備える方法です。いずれご紹介しようと思います。
さて、次回は雨にぬれてしまった後の処置を考えてみたいと思います。
■ 本記事のリンク
第1回:雨の日にはどの様な革靴を履けばよいか
第2回:通常の革靴の雨予防 (今回)
第3回:雨に降られた後の処置 (次回)