デジタル全盛の今、あえて万年筆を使う人が若年層を中心に増えているそうですが、皆さんはどうですか?
万年筆を持つメリットや、簡単な使い方については昨年と一昨年に記事で触れましたが、戴いた反響の中で多かったのが、どの万年筆を買えばよいか、というものでした。そこで今回はわたしの独断と偏見で選んだ、価格帯別のオススメ万年筆を紹介したいと思います。
もちろん、最終的には実際の店舗で試し書きをしてから購入して貰いたいのですが、これを選べば後悔しないはず! というのを5本選んでみました。
過去の参考記事
万年筆を使う、5つのメリット
現代社会人のための「万年筆の使い方」
1.5千円以下のオススメ万年筆
価格帯の特徴
この価格帯の万年筆は、殆どがカジュアルさを前面に出した万年筆です。ペン先も「鉄ペン」と呼ばれる、丈夫ですが書き味の堅い万年筆が多いのが特徴です。(実際の素材にはステンレススチールが使われることが多いです。)
- カジュアルな万年筆が欲しい
- 今はボールペンを使っているが、使い勝手の違和感なく万年筆に移行したい
- 多少乱暴な扱い方をしても大丈夫な物がよい
という方にオススメです。
LAMY サファリ
先日の記事「価格別・男性が喜ぶプレゼント7選」の5千円以下のプレゼントでも紹介したドイツLAMYのサファリです。
元々が習字用の万年筆として開発されただけあり、万年筆初心者の方にも最適であるばかりか、様々な色のモデルが発売されていることから、差し色として使うなど、ファッションとしても採り入れやすいのが特徴です。
プラスチックのモデルで2千円中盤、アルミのモデルでも3千円中盤と、無くしたり傷つくことを恐れずに使える良心的な価格も魅力です。
そして、クリップは大きくて丸みがあり、ジャケットの生地を傷めづらいのも、サファリの特徴です。高級感はあまり期待できませんが、カジュアルなお洒落筆記具として、大学生~30代前半には大変よく似合うと思います。
2.1万円以下のオススメ万年筆
価格帯の特徴
この価格から、国産の万年筆では金ペンが手に入るようになります。金ペンとは、金を材料にして作られたペン先のことで、耐腐食性があって柔らかい書き心地、そして何より見た目に美しいのが特徴です。
一方、舶来物の万年筆では、鉄ペンの上位ランクがこの価格帯を占めます。傾向としては、比較的細身でお洒落な物が多く、鉄ペンの耐久性とシックさを兼ね備えた物が手に入ります。
そこまで予算は無いけれど、子供っぽく無い万年筆を使ってみたい、と言う方にオススメです。(ただし、万年筆独特の書き方を体験したい場合は、鉄ペンよりも金ペンをオススメします。)
ウォーターマン エキスパート
フランスの筆記具メーカー、ウォーターマンの万年筆です。写真はビジネス用途(と言っても学生時代に購入した物ですが^^;)に適したマットブラックですが、様々な色が発売されています。
特徴は丸みを帯びたフォルムに、斜めに切り取られたようなキャップの先端、そして滑らかな書き心地です。定価は1万円を超えますが、量販店(試し書きが出来るところが多い)や通販なら1万円で購入出来ます。
「いかにも万年筆」という感じが全くしないため、さりげなく使うという目的には非常にマッチすると思います。一方で、万年筆のレトロさとは正反対な印象があり、それを求める場合には適しません。
パイロット キャップレス
国産の万年筆ならパイロットのカスタムか、セーラーのプロフィットだろう! という声が聞こえてきそうですが、このサイトはあくまでサラリーマン向け。商談やクライアントからのヒアリングにはこの万年筆が大活躍するはずです。
打ち合わせ中はメモをとり続けるだけで無く、手を止めて相手の発言に耳を傾けたり、自ら発言することが必要です。しかし、万年筆は書き続けなければペン先が乾燥して書けなくなってしまいます。そして、一々キャップを付けたり外したりするのはとても面倒ですが、これを解決してくれるのがこのキャップレスです。
キャップレスはノック式ボールペンと同じように、ペン先を1アクションかつ片手で格納できる画期的な万年筆。万年筆の優雅さは多少犠牲になりますが、毎日無理なくつかうことの出来る万年筆です。
上が「キャップレス」、下が少し細身の「キャップレス デシモ」です。正確には後者のみ金ペンなのですが、前者も特殊合金で金ペンなみの書き味が出ます。
また、ノックやノック音が安っぽいという方のために、ねじってペン先を格納できる「キャップレス フェルモ」というバリエーションもあります。(個人的には、スタイリッシュなデシモがおすすめ。)
定価はキャップレスが1万円、デシモが1.5万円ですが、デシモも値引きされると1万円程度で購入出来ます。
3.3万円以下のオススメ万年筆
価格帯の特徴
このくらいから、いわゆる「高級万年筆」の部類に入ります。舶来の本格的な金ペンに手が届くのもこの価格帯からです。
日本製に目を向けると、ミドル~フラッグシップクラスの製品を入手できます。もちろん書き味は抜群(日本語を書くなら舶来物より上だと思います)なのですが、ファッションとしてならば舶来品のほうがデザインが良く、オススメです。
ペリカン スーベレーン M400(M405)
ドイツを代表する万年筆メーカー、ペリカンのスーベレーンから比較的小型なM400(写真はM405)をご紹介します。
スーベレーンの特徴はおもに3つ。一つはその特徴的な見た目です。
クリップの部分がペリカンのくちばしになっていて、鳥好きにはたまりません。また、本体のカラフルな縦縞は、緑、青、赤、白等様々なバリエーションとさらに金具も金銀の2種類あって、コーディネートの幅が広がります。
2つめがその書き味。
ペン先の書き味は折り紙付きで、他のメーカーのOEMを手がけるほどです。ドイツ万年筆はモンブランとペリカンで人気を二分するのですが、わたしはペリカンの書き味のほうが滑らかで好きです。
出典:趣味の文具箱編集部編(2004)『趣味の文具箱』vol.1、エイ出版社
そして最後が豊富なラインナップ。スーベレーンは通常モデルがM300、M400、M600、M800、M1000の5種類の太さ/長さがあり、目的や手の大きさに合わせて買うことが出来ます。(405など、下一桁に5がつくモデルは金具が銀色であることを表します。また、M100やM200などのモデルが出ることもあります)
持ち運びを考慮するのならM400、デスクワーク主体ならM600やM800がオススメ。予算的にもM600以下なら実勢価格で3万円以内に収まるはずです。
軽くて短いM400ならウェストコート(ベスト)の胸ポケットに収まります。これをやりたくて、ウェストコートのほぼ全てに胸ポケットをつけています^^;。
この様に、スーベレーンM400はとても優秀な万年筆です。高級万年筆の一本目に何が良いか? と訊かれたら、まずこれをオススメします。
4.6万円以下のオススメ万年筆
価格帯の傾向
どこに出しても恥ずかしくない美しい装飾やデザインの万年筆が多いのが特徴です。華美な装飾(貴金属や宝石)がある物や限定品を除いた、殆どの本格万年筆が入手出来る金額です。
モンブラン マイスターシュテュック 146「ル・グラン」
ペリカンと双璧をなすドイツの名門万年筆メーカーであるモンブラン。その準フラッグシップ製品ともいえるのがマイスターシュテュック 146「ル・グラン」です。
大正13年(1924年)の登場以来、モンブランの成長と名声を支えたのがこのマイスターシュテュックシリーズで、同社の中核ブランドです。モンブランと言ったら、まずこれを思い浮かべる方が多いのでは無いでしょうか。
出典:趣味の文具箱編集部編(2004)『趣味の文具箱』vol.1、エイ出版社
通常ラインの万年筆としてはこの146と、ひとまわり大きいフラッグシップの149、146よりも小ぶりな145、さらに手帖サイズの114などがあります。
上が149で下が146です。写真ではあまり違いが分かりませんが、149は会社で使うのにはためらいが出るほど迫力がありますし、予算的にも146がオススメです。
マイスターシュテュックの特徴はなんと言ってもこの完成された美しさ。マイナーバージョンアップを何度も繰り返しながらではありますが、同じデザインで90年以上モンブランブランドの中心であり続けたのには、この洗練されたデザインがあることは言うまでもありません。
筆記具としてはもちろん、装飾品としても超一流です。また、モンブランは耐久性がとても高いのも特徴で、親子数代で受け継ぐことも可能です。(わたしも親や祖父のモンブランを現役で使っています。)
キャップの先にみえるホワイトスターにより、一発でモンブランと分かります。かなり古典的なフォルムですが、重厚さが際立ちます。
価格は定価が8万円(近年の円安で価格改定がありました)ですが、ディスカウントされると6万円程度で入手することが出来ます。
5.おわりに
1~2年くらい前、1,000円以下で買える万年筆が若年層を中心にヒットしました。その時はまだ高級ラインにはブームが波及していなかったようですが、先日百貨店の売り場で訊いてみると、20代~30代を中心として、高級万年筆の購入者が増えているとのことでした。
メモはパソコンのみならず、スマートフォンなどデジタル機器で取ることが一般的になりましたが、だからこそ他人とは違う、自分なりのスタイルを追求したい方が増えているのだと感じています。
デジタル全盛でかつ安いボールペンの書き味が良い時代ですが(わたしもVコーンやJetStreamは大好きです)、筆記具のファッションとしての活用に、まだまだ伸びしろがあるのでは無いかと考えています。
皆さんも万年筆、つかってみませんか?