みなさんはスリーピーススーツ、着ていますか?
ここ1~2年のうちに、20~30代のスリーピース着用率が増えたような気がします。かつては「オジサマ貫禄スーツ」の代名詞だったスリーピースですが、ファッショナブルなアイテムとして、若年層へも確実に定着していると感じます。
ということで今回は、スリーピースを着るとどんな恩恵があるのか、またどんな採り入れ方や揃え方があるのかなどを、改めて考えてみます。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
おさらい・スリーピーススーツとは
又の名を三つ揃い。ジャケット、ウェストコート(ベスト、ジレ)、トラウザーズ(ズボン)を、同一の生地で仕立てたスーツのことですね。
スーツの原型に近いため、より古典的なスタイルとされています。昭和20年代までは標準的だったようですが、最近では殆どその姿を消していました。しかし最近、ドラマの影響などもあり、若年層中心に復活の兆しがあります。
スリーピースのメリット
スリーピースというと、畏まった、クラシカルなイメージが先行しがちです。もちろん、あらたまった場でスリーピースが効果的なのは言うまでもありませんが、くわえて3つのメリットがあります。
1(メリット)ジャケットを脱いでもだらしなく見えない
ジャケットを脱いでシャツ一枚というスタイルは、どうもしまらない感じがします。別に、シャツは元々下着だったからとか、そういう観念的な問題ではなく、どうしても、肌に近く、薄い綿の生地は、だらしがなく見えてしまいます。
そこでウェストコートの出番です。これがあるだけで上品に、落ち着いて見え、かつ、ジャケットほど暑くなく動きやすいのです。
ジャケットを羽織るまでもないオフィス内など、ウェストコートがあれば見た目も良く、快適にすごせます。
2(メリット)ブレイシーズが使えてズボンが綺麗
ブレイシーズ(サスペンダー、ズボン吊り)を使ってズボンをはくと、クリース(すねの折り目)がストンと落ちてとても綺麗に見えますよね。
ブレイシーズはとても便利でスーツを綺麗に見せてくれるアイテムなのですが、やはり、かなり古めかしいイメージで、また年配の肥満体型の人が使う印象もあり、あまり若者向きではありません。
そこでスリーピースにすればブレイシーズが丸々隠れるので、悪目立ちしせずに、その恩恵にあずかることが出来ます。
3(メリット)コートいらずで暖かい
冬の季節、オーバーコートを着たまま電車やバスに乗り込むと、その暑さに辟易することが多いですよね。脱いだら脱いだ出嵩張って面倒。
そこで、スリーピースにすれば、コート有りと無しの間くらいの、丁度良い防寒性能を得ることが出来ます。これにマフラーと手袋を合わせると、都心では真冬以外オーバーコートが要らなくなります。
スリーピースの着方
では次に、具体的なスリーピース/ウェストコートの採り入れ方について考えます。普通のスーツ上下にウェストコートを加えたものがスリーピースに思えますが、以下の5点を考慮すると、より格好良く見せることが出来ます。
4(着方)体にあったウェストコートを着る
何を当然なことを、と言われてしまうかも知れませんが、体に密着する必要のあるウェストコートはサイズがあっているかそうでないかが、ジャケットを脱いだときにバレバレなのです。
もちろん、背中に尾錠がついており、ここで調節することは出来るのですが、かなり補助的な役割でしかないので注意が必要です。とくに腕の付け根(アームホール)はサイズによってかなりだぶつきが出るので注意です。
▲ 背中の尾錠部分。あくまで補助的な調節機能で、あまりアテにならない。
5(着方)衿の形に注意する
これは、シャツ・ウェストコート両方の衿が係わっています。この2つの組み合わせによっては、シャツの衿がウェストコートの衿の上に飛び出てしまうと言う、とても格好悪い状況になるからです。
上の写真がその状況の一例です。シャツがレギュラーカラーで、ウェストコートが5つボタン4つ留めのVゾーンが深いものを合わせました。
シャツをワイドカラーに変えてみました。衿先がうまくウェストコートの中に入っているので、動いても外に飛び出ません。
ウェストコートの衿を裏返したところ。このように、シャツ衿の開きが大きく、かつ襟先が長いと安全です。
6(着方)ウェストコートとズボンを離さない
もうひとつ重要なのが、ウエストコートとトラウザーズ(ズボン)の間を見えなくすること。間に、ベルトや特にシャツが見えてしまうのはかなり間抜けな感じです。そこで、トラウザーズの股上を少し深めのにすると良いと思います。
もちろん、ツーピース(ジャケット+ズボンのみ)で着る場合や、ズボン単品使用する場合に「イマドキ」でなくならない位に、若干深くするくらいでOKです。(ツーピース用のズボンと、スリーピース用のズボンを両方用意するのが理想ではあります)
また、前項でズボンが綺麗になる効果をご紹介しましたが、ブレイシーズでズボンがずり落ちないように固定するのもお薦めです。
ここでは、ズボンの位置が下がりシャツが見えないようにすることが目的ですが、ブレイシーズにすれば、ベルトやベルトのバックルそのものが無くなりますし、シャツがたわんでウェストコートが膨らむのも防止できます。
▲ 左が股上深めのスリーピース用、右が浅めのツーピース用。イージーオーダーなどでスペアズボンとして作れば、安く揃えることが出来る。後の股上をさらに深くし、ベルトループを取るなどブレイシーズ専用の本格仕様にする手も。
7(着方)カジュアル物、流行り/廃りに注意する
若年層サラリーマンにウェストコート着用者が増えた理由の一つに、カジュアル用途でのベスト(この場合はフランス語で「ジレ」と呼ばれる事が多い)の利用が、先行して進んだことがあるのではないかと思います。
事実、社内や街中で観察すると、若年層スリーピース着用者の半分くらいが、普通のツーピースにカジュアル用のジレを合わせているというパターンで、ビジネス用途というよりは遊び着といった感じのものも多くありました。
決して悪いことだけではないのですが、シックな印象を出そうとスリーピースを採り入れたのに、かえってカジュアル感が強くなるという結果は避けるべきでしょう。
また、最近流行のダブルのウェストコートや、ディナージャケット(タキシード)の拝絹のようにU字型になっている物など、流行色が強い物は、ビジネス用途では避けた方が無難だと思います。
スリーピースの揃え方
それでは最後に、スリーピーススーツをどう入手すれば良いかを考えてみます。
8 (入手)前開きのニットベストで代用する
新しく買う前に、既存資産を活用する方法を。
本来のスリーピースは共地で作られた物ですが、スリーピースの恩恵にあずかるという目的では、必ずしも、同じ生地で作られたものが必要ではないと思います。
そこで、ニットベストの登場です。上手くニットベストをジャケットのインナーとして使うことが出来れば、スリーピース的な活用が可能です。
ただし、2つだけ注意する項目があります。
1つは、前開きであること。プルオーバータイプの場合、これはこれで良いのですが、スリーピース的な雰囲気は殆ど出なくなってしまいます。
2つめは、ハイゲージであること。ハイゲージ(細い毛糸)でないと、野暮ったい印象になってしまい、スリーピースと同じ着方は出来なくなってしまうことが多いのです。
9 (入手)イージーオーダーが意外に安い
新しくスリーピーススーツを入手する場合、やはりお薦めなのはイージーオーダーです。理由はいずれもウェストコートで、2つあります。
1つめは、吊し(既製)では自分に合うサイズがとても見つけにくいこと。体に密着するアイテムで、あまりゆとりがないことが原因です。そして、密着しなければ、やはりだらしなく見えます。
もう一つは、イージーオーダーの場合、とても安価に購入出来るからです。チェーン店であれば1万円前後の追加で、個人店であっても2万円前後程度の追加で作れてしまいます。
これは、スーツ本体の余剰生地でウェストコート生地の大部分をまかない、ほぼ工賃とボタン代金の追加で作れてしまうためです。これを利用しない手はないですよね。
如何でしょうか。
ほかにも単品使いやオッドベスト、仕立てるときの裏技などもご紹介したかったのですが、文字数が多くなってしまうので、これらのTipsはまた別の機会にでも取り上げたいと思います。
これからの季節、皆さんもぜひウェストコートを採り入れてみて下さいね。
それでは。