前々回の記事「スリーピースのメリット・着方・揃え方、9つのポイント」は、
質問、コメントなどで結構な反応があり(有り難う御座います)、
みなさんのスリーピース(三つ揃い)への関心の高さがうかがえました。
いくつか戴いたメッセージの中で一番多かったのが、
スリーピースを着たいけど機会が無い、少し派手に見えるのではないかなどの、
興味はあるが一歩踏み出せないという、慎重派の意見/質問でした。
そこで、総論的だった前々回記事の補完として、
「どうすればスリーピース/ベスト(ウェストコート)を身近に使えるか」
をテーマに、皆さんと考えたいと思います。
ポイント1 必ずしも共地で無くて良い
本来の「スリーピース(三つ揃い)」の意味からは外れますが、
ウェストコート(ベスト)をスーツスタイルに採り入れるという意味では、
必ずしも共地(同じ生地を使う)である必要は無いと思います。
「フォーマルさ」は時代によって変わる物ですが、
そもそものウェストコートはジャケットと共地ではないからです。
(燕尾服やディレクターズスーツなどが典型例)
写真はグレイのウェストコートに、紺のジャケットを着用した例です。
素材感を合わせることで、とても調和して見えます。
「ツーピースしか持っていない」という方にとっては、
使いやすい無地の、グレーや紺色などのウェストコートさえ有れば、
オッドベストとして、スリーピース的に着こなすことが出来るはずです。
ポイント2 必ずしも裏地を揃える必要は無い
ウェストコートというと、
光沢のある派手な背中を思い浮かべる方が多いでしょう。
そのため、これが原因で敬遠している場合も多いようです。
しかし、必ずしも、背中の生地はジャケットの裏地と同一である必要はありません。
主な方法としては2つ。
1つは表地を使う方法と、もう一つは別の裏地を使う方法です。
1.表地を使う例
表地を使わずに仕立てた例です。
誂え前提になってしまいますが
尾錠(アジャスター)を使わない例が多いです。
背中を表地にすることで、
春秋のそんなに寒くない時期、
ジャケットを羽織らず外出する場合に重宝します。
また、裏地の素材(キュプラなど)はしわになりやすく、
とくにデスクワークが多いと裾がヨレヨレになってしまうのですが、
表地であれば、そういったことが少ないです。
2.別の裏地を使う例
少しわかりにくいですが、ジャケットの裏と、ウェストコートを重ねた写真です。
(上から、ジャケットの台場、ジャケットの裏地、ウェストコートの背中、ウェストコートの表地)
市松模様部分がジャケットの裏地ですが、
これをそのままウェストコートに使うと派手なので、青無地の裏地を使いました。
「チラ見せ」が基本のジャケット裏地を派手に、
「常見せ」が基本のウェストコートの背中地をおとなしめにすることで、
サラリーマンでも無理なく、お洒落の幅が広がると思います。
ポイント3 基本的なルールをおさえる
間違った着こなしや、それによる悪目立ちが不安というメッセージがありました。
たしかに、これまで廃れていたスタイルを、
それも職場の中で比較的若年層の方が復活させるのには勇気が要るかも知れません。
しかし一方で、
「基本的なルールさえ守れば、センスがなくても、安い物でも、結構まともに見える」
これが、スーツスタイルの良いところですよね。
三つ揃いやウェストコートにも同じ事で、
いくつかの約束事を守り、あとは堂々としていれば、
特に違和感なく、かつ、お洒落に着こなすことが出来ると思いますよ。
基本の5ルール
※ 1~3については、前々回の記事で詳述しましたので、
※ 詳しくはそちらをご覧ください。
- 体にあったウェストコートを着る
ウェストコートは体に一番密着する衣服です。
それも、シャツよりゆとりがありません。
どの衣服もサイズ感は大事ですが、ウェストコートでは特に重要です。 - シャツの衿に注意する
ウェストコートの衿はジャケットよりも薄いので、
シャツ衿の開きや芯地によっては飛び出してしまうので注意。
また、ボタンダウンなどスポーティな物も基本的には似合いません。 - ウェストコートとズボンとの間を離さない
特にズボンと共地のウェストコートの場合、間を見せないことが重要です。
出来ればブレイシーズ(サスペンダー)を使いたいところですが、
難しい場合はせめてベルトのバックルが見えないようにします。
(たとえば、バックル位置を右にずらすことで、露出を黒革だけに出来る) - 一番下のボタンは開ける
この作法はジャケットと一緒です。
実用面でも理にかなっており、デスクワークによるシワを防ぐことが出来ます。
(下の写真の左が例。右はそもそもボタンを離してあるデザイン) - ジャケットと素材感を合わせる
これはオッドベストの場合の作法。
意図的に「ハズし」として使う場合を除き、
起毛には起毛を、艶有りには艶有りを、が基本です。
涼しい/寒い季節だからこそ出来るスリーピースのスタイル。
初めは迷うかも知れませんが、この時期ならではの、
普段のスーツとはひと味違う、少し引き締まったスタイルを楽しんでみませんか。
皆さんの参考になりましたら幸いです。