皆さんのシャツ(ワイシャツ)に、胸ポケットはついていますか?
昨日の朝日新聞電子版に、下記のような記事が掲載されていました。一部引用します。
「鎌倉シャツ」を手がける「メーカーズシャツ鎌倉」(鎌倉市)が、胸ポケットのないワイシャツの販売に挑戦し始めた。ニューヨークに進出し、世界のビジネスマンから評価されるシャツをつくるには、日本の常識を打ち破る必要があると決断した。
「おまえ、オーナーだろ。良い生地を使っていると思うけれどシャツの文化をわかっていないな」
「東洋の田舎者だ」
ニューヨーク店の開店初日の昨年10月30日。貞末良雄会長(72)も店内で客を迎えたが、反応は散々だった。シャツを手にしても胸ポケットを理由に買ってくれない客が3~4割。試着室で胸ポケットに気づき、「どういうことだ。説明してくれ」とあきれ顔で聞いてくる客もいたという。(後略)
「鎌倉シャツ、胸ポケットやめます NY向け「世界標準」」、『朝日新聞Digital』平成25年4月16日配信、朝日新聞社(
http://www.asahi.com/business/update/0416/TKY201304160200.htmlリンク切れ)
低価格/高品質ドレスシャツを売り文句にする鎌倉シャツが、アメリカ進出を機に胸ポケット無しを標準とする、という記事でした。
それでは、我々がシャツを買う(作る)時も、胸ポケット無しを選んだ方が良い、と言う事でしょうか。
少し考えてみたいと思います。
(今回はハウツー物というよりは、感想寄りのエントリーです。)
■ 「シャツは下着」という伝統
スーツの歴史を考えたとき、シャツ(ワイシャツ)は下着であったという歴然とした事実があります。
というのも、昔のシャツを見ると、シャツの裾が現在とは違い非常に長く、股を覆う仕様(=ふんどしと同一の役割)のものもありました。
また、欧米では高温多湿な場所を除き、アンダーシャツを着る習慣があまりないようです。
たとえば、アンダーシャツやパンツに、ポケットを付けるでしょうか?
ポケットがついたアンダーシャツやパンツを買うか、と言い換えても良いと思いますが、
おそらくは一般的では無いと思います。
■ ウェストコートが消え、シャツの地位が向上
なぜこの様な混乱が起きているかというと、一つの理由としてウェストコート(ベスト、チョッキ、ジレ)が無くなったことが挙げられます
そもそも、ウェストコートには胸ポケットや腰ポケットがついており、懐中時計やペンなど、軽い物はそこに収納する文化がありました。しかし、現代ではスリーピース(ウェストコートつきのスーツスタイル)が少なくなり、小物を入れるところが無くなってしまった、というわけです。
そこでシャツの役割変化が起きます。
ウェストコートが無くなった今、シャツは下着としての役割を終え、カラフルなボタンやボタンホール、装飾などを備えて、にわかにその地位を向上させつつある……のがわが国の現状です。
クールビズなどの影響もあってシャツの装飾が増え、「ジャケットを脱ぐときもある」から、「ジャケットを着るときもある」というスタイルに変化しつつあります。
おそらく、ここにも欧米スーツ文化圏との乖離があるのでしょう。
■ 小物は出来れば鞄へ……
一つだけ言えることとして、シャツにしろ、スーツにしろ、
胸ポケットに物を入れるのはあまりお薦めはしない、ということです。
それは、伝統云々の問題では無く、見た目の問題なのです。
スーツを選ぶ際に大事なのは肩と胸、とよく言いますが、
ジャケットの見た目として、胸のドレープは非常に重要なのです。
従って、その部分に厚みのある物を入れると、着崩れて見えてしまいます。
そうなると、自ずからシャツのポケットは不要なのではないか、と考えるように成ります。
ポケットが無ければ物を入れない、物を入れなければ美しく見える、そういうわけです。
ジャケットのポケットも、物を入れないように糸で縫い付けている御仁も居るくらいですし。
■ シャツにポケットは有りか無しか
ドレスシャツ(スーツの下に着るシャツ)は無し、
一般的なシャツにはあっても良い、位だと思います。
ここでいう一般的なシャツとは、
夏場にジャケット無しで着ることが多いシャツと想定して頂ければ結構です。
デニムシャツなどのカジュアルシャツが含まれます。
一方ドレスシャツとは、基本的にはスーツの下に着用し、
生地、衿や袖の美しさを追求する必要のあるものを言います。
以上、参考になりましたら幸いです。
たまたまRSSで流れてきた朝日新聞の記事に目がとまり、普段とは違うスタイルで思うままに書いてしまいました。とりとめの無い文書で申し訳ない限りですが、シャツにおけるポケットの意義について考える切っ掛けになれば幸いです。
それでは。