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丈夫、ドレープ、良い肌触りの「精紡交撚生地」はもっと注目されるべき?

投稿日:平成29年(2017) 12月10日  更新日:平成30年(2018) 5月28日 

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先日オンラインオーダーシャツ屋のFirst Experienceで、あるシャツ生地をリピートで注文してしまいました。

それが今回のタイトルにもなっている「精紡交撚生地」のシャツです。というのも、超高番手の単糸生地並の軟らさと艶があるのに、120番双糸でしかも安いという不思議な生地だったからです。

本日はそんな精紡交撚生地の魅力について、製造元にぶつけた質問と実際に納品されたシャツのレビューを中心として、どんな用途に使えそうか、どんな人に向いているか等々、皆さんと一緒に考えてみようと思います。

1.精紡交撚生地とは

この生地を使ったシャツを販売しているFirst Experienceに質問をしつつ、特徴を下記の通りまとめてみました。

名前

まずこの名前の読み方から。そのまま「せいぼうこうねんきじ」というそうです。

最新の技術で作られているそうで、ネットでも検索してみましたが、ほとんど情報が出てきませんでした。生地メーカーでは、「ニューツイスト」とも呼ぶようです。

当初、サイロンスパンに近い物かと思ったのですが、どうも違うようです。この辺り、繊維に詳しい方のコメントがありましたら、お寄せ下さい^^;

特徴1:双糸の強度に、単糸の見栄えと肌触り

もっとも特徴的なのは、美しい艶と、やわらかい肌触りでしょう。これを、双糸の生地で実現している点が驚きです。

カタログスペック上は120番手双糸のブロード生地ですが、外観や肌触りは同じ番手の単糸生地くらいに感じます。

そして、高番手の単糸生地は耐久性が悪く、ビジネス用途には不向きですが、こちらは双糸なので問題は無いようです。

参考:単糸と双糸

単糸を2本撚って作られた糸が双糸です。

単糸は糸が細く軟らかいため、生地に美しいドレープや、やわらかい肌触りが実現出来ますが、一方で耐久性が弱いのが欠点です。イタリア系の生地に多いです。

双糸は生地が丈夫になるものの、柔らかさよりコシが強調され、また細い(高価な)糸を使わないと光沢が出にくくなります。イギリス系の生地に多いです。

双糸100番手が、単糸50番手の強度に相当します。そのため、200番手や300番手と呼ばれる超細番手の生地は、単糸を3本、または4本撚って作られていることが多いです。

特徴2:安価

120番手双糸が仕立代込みで定価9,800円というのだけでも割安ですが、見た目や肌触りはそれ以上ですから驚異的です。

生地ブランドにこだわらなければ、とても買い得だと思います。

ただし、生地の種類が少なく、色柄もベーシックなものに限られており、拡充の予定も今のところ無いそうです。そのため、凝った生地デザインが欲しいという場合には不向き、という欠点はあります。

 

続いて、写真を交えながら、詳しく見ていきます。

 

2.外観

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これが精紡交撚生地です。 ライティングが下手で申し訳ないのですが、生地に独特のヌメりがあるのが分かります。

 

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別の角度から。(色温度がめちゃくちゃですみません。。。)

 

 

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タイドアップすると、襟は比較的マットな感じに仕上がります。しかし、腕など、自由に動く部分については、かなり強い光沢が生まれます。

 

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こちらは前回作った時の、水色の生地です。うっすらと繊維の筋か見えます。

 

140番手双糸との比較

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写真は、伝統的な140番双糸(メーカーはTESTA、織りは同じブロード)を使ったシャツの生地で、価格は同店の定価ベースで倍くらいします。

このレベルの生地と比較しても、光沢感は精紡交撚の方が上です。(やはり比較すべきは単糸のヌメッとした生地なのでしょうが、生憎適当なシャツが手元に無く……。)

もちろん、精紡交撚生地が全て優っているわけではありません。こちらの生地にある、シャリ感やマットで上品な光沢は、精紡交撚生地とは別ベクトルの、正統派な良さがあるように思います。精紡交撚生地がサシたっぷりの美味しい肉だとすると、こちらはうまみが詰まった、上品な高級赤身肉といったところでしょうか。

 

3.着心地

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とにかく軟らかい

双糸であるにもかかわらず、単糸の風合いが楽しめます。 特に、軟らかい生地が好きという方にはオススメです。

逆に、ハリやシャリ感は少なめです。トーマスメイソンや、鎌倉シャツの4ply高番手生地のシャツとは対照的な肌触りです。

若干厚手

一般的な高番手生地に比べると、若干厚手に感じます。前項に単糸の風合いと書きましたが、単糸の生地に多いペラペラ感は全く有りません。

水分はよく吸いますし、通気性もある程度あるものの、厚手かつ強い光沢感を考えると、涼しい季節に合いそうです。

 

4.盛装用にオススメ

一方で、このような高級感がある生地は、普段のビジネス用途にピッタリかというと、100%は当てはまらないでしょう。

年齢にもよりますが、スーツの生地も同様に、光沢の強い派手な雰囲気が適さない業種/職種/シーンもあることと思います。

そんな方には、パーティや披露宴などの盛装用としてオススメできます。

 

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私も、リピートした際には、盛装用を想定してダブルカフにしてみました。

スーツは必ずしも強い光沢は必要ありませんが、ネクタイの素材をシャツの光沢感に合わせると、コーディネートが上手くいくと思います。

 

5.買いかどうか

ここまでご覧頂ければ分かるかと思いますが、個人的にはとても「買い」な生地だと思います。

こんな人にお勧め

まとめると、以下に当てはまる方にオススメです。

  • 光沢感のある生地か欲しい
  • 柔らかい手触りの生地が欲しい
  • 耐久性は犠牲にしたくない
  • コスパ重視
  • 夏用ではない

年内にセールがありそう

定価ベースでも安い生地ですが、直近で特売があるか確認したところ、12月中に精紡交撚生地を含むセールを実施するそうです。

興味のある方は、とりあえず同店のメルマガに登録しておくのも手です。

http://www.firstexperience.jp/support/regist_mail.html

 

(おまけ)First Experienceへの質問と回答

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最後に、疑問に思ったことを店側にぶつけてみましたので、皆さんに共有したいと思います(回答文のコピペは許諾済)。

若干技術的な話も入ってきますが、興味のある方はご覧下さい。 

Q1. そもそも「精紡交撚生地」って何者? 単糸なの ?双糸なの?

スーピマ綿(超長綿)の糸をケバの少なくなる特殊加工のコンパクトヤーンにしたものに最新紡績技術でツイスト(撚り)をかけていますので当店の精紡交撚糸は双糸となります。

当店では精紡交撚と呼んでいますが、メーカーはニューツイストと呼んでいます。

Q2. 毛羽立ちなど、強度に問題はない?

通常の高級な素材は、ケバを減らすためにガス焼きをしますが、精紡交撚糸はケバを内側に入れる特殊な織り方をし、ガス焼きよりもケバを減らしながら、糸の太さも均一に維持する(ガス焼きすると糸が細くなる)先端紡績の技術です。

このために、強度もありながらケバは少ない素材となります。なお、当店の精紡交撚は(好みの問題となりますが)かなりやわらかな風合いとなり、少しハリ感は少ないかと思われます。

Q3. 他店では余り見かけないのはなぜ?

流通量が少ないのは、生地の価格面での問題が大きいと思われます。当店では、直接契約をしておりますのでかなり安価にご提供しておりますが、通常であればトーマスメイソンクラス以上の価格となりますので、ブランド力で選択から外れるのではないかと思われます。

また、このようなことから需要が少ないので、生産量も少なくなっていると思われます。

Q4. よく売れている?

評判はかなり良いと思われます。精紡交撚だけをリピートするお客様が多くおられます。

Q5. 色柄の展開を増やす予定は?

現状では色柄などの展開は現状ございません。

 

リンク

 

※ それにしても繊維や記事の話って難しいですね……。 本記事は、本やWEBでの調査に加え、実際に業者に取材しつつ書いていますが、著者はアパレルや繊維産業とは別業界に生息している、一介のファッション好きサラリーマンです。もし事実誤認等が有りましたら、お気軽にコメント欄からご連絡いただけると幸いです。

 

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