靴の手入れ 靴底

靴底の修理3:実際にオールソールをしてみました

投稿日:平成29年(2017) 9月10日  更新日:平成30年(2018) 9月24日 

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前々回前回と、連続して靴底の修理について取り上げました。最終回の今回はオールソールの体験記です。

前回の最後に書きましたが、このあいだ、贔屓にしていた近所の靴修理店が、閉店してしまいました。

新しい店を探していますが、基本的に個人経営の店が好きなので、未だ見つからず……。そんな中、要オールソールな靴が出てしまったので、以前から目をつけていた宅配便で靴修理を受け付けている店に依頼してみることにしました。

今回はお店側のご厚意により、店側で撮影した写真の引用許可を戴きました。そこで、オールソールの作業内容を含む、革底の素材等の相談から、発送、完成品の感想まで、一連の流れをご紹介します。

※ オールソールの概要については前回の記事を、靴底の修理については前々回の記事をご覧下さい。また、本記事における金額や仕様については、修理実施時点(H29.8)のものです。

1.対象となる靴

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今回オールソールするのは、こちらのフルブローグ(英・Church’s製)です。

今から8~9年ほど前、英ポンドが急落していた時期に、個人輸入で購入しました。

永く履いていますが、履く回数が比較的少なかったため、今回が初のオールソールです。

損傷度合い

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踵ですが、かなりすり減っています。これだけなら、踵の交換のみで良いのですが……

 

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ソールも指で押すとすぐにへこみます。また、点字ブロックでは足裏にかなり感触が伝わる状況でした。

そのため、今回はオールソールを選ぶことにしました。

 

2.選んだ店

前回の記事に記載したヒントで、既に店の名前がバレていた感はありますが――今回オールソールをお願いしたのは、大阪にある「Bontà」です。

Bontàは靴のビスポークもしており、日頃綺麗な写真をブログで公開している靴工房です。実はかれこれ5年くらい、靴の画像や製作工程を、一読者としてニヤニヤと定期閲覧していました。

一方で、店のウェブサイトを読むと宅配便での修理受付もしているとのこと、良い機会なのでお願いしてみることにしました。

 

3.店とのやりとり

公式サイトを読み、一通りの注文方法は分かりました。ただ、見積もりを取る必要があるのと、いくつか質問があったので店にメールをしました。

① 利用方法

サイトにも記載がありましたが、メールでも確認したところによると、オールソールは以下の流れで行われます。

  1. メールで写真や靴の状況などを送り、見積を依頼する
  2. 見積に納得すれば、宅配便で靴を送る
  3. 修理完了の連絡が来る
  4. 銀行振込で代金を支払う
  5. 宅配便で靴が返送される

なお、8,888円以上であれば、往復送料が無料になります。一般的な靴修理店では、良くて返却時の送料無料くらいなため、良心的です。

ただし、店の経営努力で成り立っているサービスのため、極力小さなサイズで送ることが重要です。

② 靴底の材質

今回、靴底の革は以下の3種類から選ぶことが出来ました。

  • JR(J.レンデンバッハ)
  • レモンティ
  • ベルギー

それぞれの特徴も教えてもらいましたので、参考までに記載します。

JR(J.レンデンバッハ)

粘りがあって、耐久性に優れるとのこと。路面が濡れている際も、すり減りづらいそうです。

わたしも、JRのソールを使った靴を、何足か持っています。確かに独特の感触で、耐久性に優れていると感じます。

一方で、個人的な感想ですが、靴墨ではコバ部分に色を乗せづらく、コバインキがあったほうが良いように思います(個体差でしょうか……)。

価格は、通常の革底を用いたオールソールに+4,000円の14,800円で注文可能でした。(他店ではもっと追加料金を取っているところが多く、お得に感じます。)

レモンティ

肉厚(個体差はあるものの、概ね0.5mm程度プラス)なものの、しなやかな履き心地が特徴とのこと。

店側にオススメを訊いたところ、Church'sの純正に近い仕上がりになるので良い、とアドバイスを貰ったため、今回はこれにしました。

金額は+2,100円の12,900円でした。

ベルギー

コスパが一番良く、国産の3万円~4万円台の靴に良く採用されていることのこと。

通常使用には十分なようですが、前の2つに比べると耐久性が劣るそうで、今回は見送りました。

この素材が、革底オールソールの最低料金である10,800円です(とても良心な価格です。送料込と考えると、とんでもないです)。

③ オプション

厚めのソール(=つま先が削れやすい)であることを考慮し、つま先の補強も同時にしてしまおうと考えました。

価格表にはビンテージスチール(1,700円)の記載がありましたが、歩行時の音や、手入れ時の危なさを考え、ラバーでの補強が出来ないか相談しました。

その結果、1,000円で実施可能との回答があり、お願いをしました。

なお、標準でヒドゥンチャネル(靴底の縫い目が見えない仕様にすること)仕様になるとのこと。このオールソールの価格でヒドゥンチャネル込みは驚きです……。

④ お願いした仕様

上記の通り、レモンティのソールを用いたオールソールと、つま先のラバー補強をお願いしました。

12,900円+1,000円で、合計13,900円(税抜・送料込)でした。

この仕様、このサービスでとなると、(少なくとも東京では)あまり見当たらない価格です。

ただし、納期は通常3~4週間程度かかるとの事です。その辺りは、申込時に考慮する必要があります。(とはいえ、後述しますが今回は1週間程度で終わりました^^;)

 

4.店への発送

メールで送られてきた見積に、申込する旨を回答し、早速発送の準備に取りかかります。

今回、送料は店側の負担ではあるものの、極力小さくして費用を押さえるのがマナー。

宅配便の一番小さなサイズは60ですので、まずは入れてみました。

 

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はい。当然片足しか入りません。

 

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そこで、もう1サイズ大きな80サイズに入れてみたのがこちら。この辺が妥当ですね。

 

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(どこの店も同じですが)シューツリーは入れないで欲しいとのことなので、靴だけで送ります。

ただし、極力靴同士があたらないように、緩衝材を詰めます。

 

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上面にも詰めます。

 

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完成。(Amazonの箱を使いました^^;)

 

5.修理の様子

実は、この靴はBontàのブログに修理の様子が載っています。

詳しくは当該エントリーを見ていただくとして、ここではかいつまんでご紹介します(お店のご厚意で、画像の引用許可を戴きました。有り難う御座いました)。

 

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バラしたところ。

 

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出し縫いの糸を抜いています。見た目が良くなる反面、手間がかかります。有難い話です。

 

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靴底を縫い付ける前の様子。

つま先の部分が若干上がっているのが分かります。これは、平らな革を事前に湾曲させ、つま先が削れるのを防いでいるそう。

確かに、安い革靴はソールが平らでガリガリ削れますよね。こういった所も嬉しい配慮です。

 

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機械で縫い合わせますが、極力元あった穴に糸が入るようにするとのこと。

今まで比較的腕の良い店に頼んでいたので気にしていませんでしたが、よくよく考えるととても難しい職人技ですね。

 

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ヒールを取り付け、飾り釘を打ち、仕上げをして終了です。

 

6.完成品の受け取り

事前に、通常納期が3~4週間と言われていたこと、さらにお盆休み期間だったので、1ヶ月くらいはかかるだろうと考えていました。

しかし、実際のところは、店へ発送してから1週間でBontà側のブログが更新され、修理が滞りなく(かつ美しい仕上がりで)進んでいることが確認出来ました^^;

そして翌日、靴の発送連絡がメールでありました。

到着

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発送したときとは違う梱包で到着しました。

 

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よく見ると紙袋で、中に緩衝材にくるまれた靴が入っています。

 

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取り出したところ。

 

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大型の緩衝材の内側に、小型の緩衝材(通称プチプチ)、そして個別に不織布で靴がくるまれていました。

 

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シューツリー代わりの緩衝材も^^;

仕上がりの確認

前日にBontàのブログで仕上がりが確認出来ていましたが、改めて見てみます。

 

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まずは全体。とてもきれいですね……。

Church'sは元々ヒドゥンチャネル仕様ではありませんが、これはこれでよいものです。

 

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かかと。この低価格でも、レザー製のヒールが標準でついてきます。

 

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つまさき。オプションでラバー補強をお願いしましたが、とても綺麗です。

 

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つま先を薄く削って、ラバーをはめ込み、さらに両サイドへ釘を打っているのがわかります。

とても丁寧な噛み合わせです。

 

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ここで職人の腕がわかるのですが、とても綺麗な縫い目です。

 

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つまさきを上から。

 

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前後に加え、足に沿って左右もしっかりとカーブさせているのがわかります。

 

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ヒールの部分。

 

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今回選んだレモンティは、事前に案内があったとおり若干厚目です。

ただし、Church'sは元々無骨なデザインで、新品時の厚さもこれくらいだったと記憶していますので、丁度良い感じでした。

 

7.履いてみる

新品とは違う、慣れた履き心地

足入れして思ったのは「やはりオールソールは良いな」ということ。

オールソールと新品の靴との根本的な違いは、エージング(履き心地の上では、主にインソールの沈み込み)を踏襲できること。

即ち、長時間履き込むことによって完成した、革靴の履き心地を引き継げることにあります。

 

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汚くて恐縮ですが――私の足の形に沿って、インソールが沈み込んでいるのが分かります。

これは、オールソールをした後も変わりがなく、とても履き心地が良く感じます。

最初は滑る

当然ですが、新品のソールはツルツルしているため、特に駅構内などでは良く滑ります。その点は注意する必要があります。

ただ、コンクリート舗装面や、砂利道を歩くことで、すぐに解消されるでしょう。

厚手を感じさせない弾力

厚手なソールのため、硬い感触になってしまうのではと危惧していましたが、杞憂でした。

適正な油分が補給されているソールであることと、縫い付ける前にしっかりと湾曲させる作業を経ていることが理由では無いかと思います。

 

8.総評

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  • 仕上がりが美しく丁寧、かつ履き心地も良いこと
  • 利用者に対する説明が的確で分かりやすいこと
  • 価格が低廉で良心的であること

上記から、やはり頼んで正解でした。

Bontàのブログでは毎回美しいビスポークシューズや修理品が掲載されています。これを見るだけでも幸せな気分になれますが、これからは一顧客としても、纏まった金額の修理の際には、お世話になろうと思いました。

大阪在住の方はうらやましいですね(^^;

 

皆さんには行きつけの靴修理店はありますか? オススメのお店がありましたら、コメントをお待ちしています。

 

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