靴の手入れ

新しい靴を下ろすときの手入れを考える(ライトブラウン編)

投稿日:平成26年(2014) 8月3日 

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買ってきた新しい革靴
皆さんは、初めて使うときにどの様なケアをしていますか?

私は「とりあえずデリケートクリームを塗っておくか」といった程度に、
かなり漠然と新しい靴を下ろしてきました。

しかし、靴好きの友人と先日この話題が出たとき、
お互いその解を持ち合わせていなかったのがきっかけで、
今回、実際に新しい靴を下ろしながら、真面目に考えてみることにしました。

特に今回は、シミや色むらが出やすい、
デリケートな淡色の靴に的を絞って考えてみたいと思います。

かなりニッチな話題ではあるのですが、誰しも経験する話ですし、
「なんのために靴を手入れするのか」を再確認する良い機会になりました。
皆さんも一緒に考えてみませんか?

 

 

 

「保革」と「化粧」が手入れの基本

靴にはどんな手入れが必要なのかを考えて、
その中で、新しい靴にはどの様な手入れが必要なのか、の順番で考えてみたいと思います。

まず、靴の手入れを一言で言うと、「保革と化粧」です。
靴を構成する「革」を良いコンディションに保ちながら、
見栄えが良いように化粧をするわけです。

これを工程別に分解すると、以下の表になりました。

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①艶とり

古いロウ分や汚れを除去します。(大前提として、ブラッシングは済ませてください)
保革/補色成分が浸透しやすくする準備で、またひび割れの原因になるロウ分の厚塗りを防ぎます。
方法: ステイリムーバーユニクリームなどを、布に少量とり、優しく擦ります

②保革

保革成分である油分と水分を革に浸透させます。
革に柔軟性が出て、ひび割れを防ぎ、長持ちするようになります。
方法: デリケートクリームや柔らかめの乳化性クリームを、布やペネトレイトブラシで塗ります

③補色

顔料を使って、革に補色をします。
色落ちした部分、また①で取れない汚れを修復し、深みのある色になります。
方法: 乳化性クリームを、布やペネトレイトブラシで塗ります
(顔料が多く補色力がある、サフィールノワールが優秀)

④艶だし

ロウ分を使って、革の表面に艶をつけます。
光沢が出ることで靴の高級感が増し、さらに防水性も高めます。
方法:缶入りの油性靴墨などを、ごく少量の水を加えながら布で塗り込みます

 

 

淡色の新しい靴を下ろす場合の手入れは?

次に、前項で挙げた靴の手入れを、
新しい靴を下ろすときに当てはめるとどうなるかを考えます。

①艶とり

新しい靴にステインリムーバーなどが必要かは、場合によりけりだと思います。

メーカーや店舗が、見栄えを良くするために沢山靴墨をつかっていたり、
保管時に汚れがついている場合は使うべきでしょう。
しかしそうで無い場合、淡色の革は色落やダメージが出やすいので危険性です。
※ 靴が鏡のようにつやつやになっていたら、使うことを検討してください。

②保革

繰り返しになりますが、
水分と油分が足りない革は、何度も曲げることでひび割れが起きます。
特に、甲の屈曲部分が一番ひび割れが起きやすいゾーンです。

流通時や店舗にストックされている期間、靴の水分と油分は抜ける一方で、
1~2年、酷い場合はそれ以上の期間放置され、
表面は普通でも、革の奥はカサカサの状態にあります。

この状況でいきなり履くと、靴へ大きなダメージを与えることになります。
その靴を永く履くためにも、新しい靴の保革は特にしっかり行うべきです。

デリケートクリーム以外だと、サフィールのレザーローション
コロニルのディアマントなどが、革に悪影響がなく多く塗り込めるのでお薦めです。
これらが無い場合は、乳化性クリームでも代替できます。
(ただし、乳化性クリームはロウ分や顔料が多く、沢山使うと厚塗りになるので注意)

③補色、④艶だし

直射日光が当たるショーケースの展示品ならまだしも、
新品の靴に補色が必要なことはほぼ無く、色つきの靴クリームは特に必要有りません。
従って、化粧は必要に応じたつや出しだけで良いことになります。
※ 特に淡色の革は、革の色よりも薄いクリームを使うなど、補色は慎重に行います

つや出しは、油性靴墨のほか、ロウ分が入っているレザーローション、
無色の乳化性クリームでも代用できます。

 

淡色の靴を下ろすときのまとめ

  • 買った靴に強いロウ分の光沢が無ければ、ステインリムーバーを使わない
  • 長期間に亘る流通/在庫時を経て、靴の油分や水分はかなり抜けている
  • 油分や水分が抜けた状態で履くとひび割れの原因になるので、よく保革する
  • 新しい靴に色つきの乳化性クリームは基本的には必要ない
  • 必要に応じ、ロウ入りのローションやクリーム、油性靴墨でつや出しをする

 

 

実際に作業をしてみる

それでは実際に靴を下ろしてみます。
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今回のいけにえはこちら。
デッドストックで安く買えた、ライトブラウンの外羽根プレーントゥです。
※ 暖色の照明で撮影したため、濃い色に見えますが、実際にはもっと薄い色です^^;

 

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普通よりも薄めのデリケートな革(いわゆるミュージアムカーフ)なうえ、
長期間保管されていたためか、水分油分が抜けぎみです。
(外羽根の付け根部分に、すでにシワが出ています)

まずは靴紐をほどき、作業を開始します。
靴の表面を確認し、ロウ分による光沢があまりなかったため、
ステインリムーバーは使わないことにします。

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次に、水分補給のためにデリケートクリームを塗ります。
このとき、一度にダボッとつけず、何度か塗り重ねていくのがコツです。
塗り終わると、全体がしっとりとして、また、マットな感じになりました。

普段なら、この後にライトブラウンの乳化性クリームを塗ることになるのですが、
今回は新しい靴なので、色つきの乳化性クリームは使いません。

次に、油分と若干のロウ分を含む、サフィールのレザーローション使います。
デリケートクリームは優秀なのですが、たまに油分が足りないと感じることが有り、
こんな時にレザーローションやコロニルのディアマンテが活躍します。

 

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こちらがレザーローションを塗って少し乾かし、ブラシで軽く磨いた状態です。
保革用油分に加え、ロウ分も含まれているので結構光っています。

レザーローションを使うことで、油性靴墨を靴全体に「厚化粧」しなくても、
軟らかい光沢をまんべんなく出すことが可能です。

 

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無色のKIWI(油性靴墨)を使い、つま先に若干光沢を出します。
最後に、靴紐をかけたうえで、
全体をストッキングで軽く擦り、艶を出して整えれば完成です。

 

革の状態を確認すると、当初は外羽根を少し曲げると入っていた細かいシワが、
水分と油分が入ったため、かなり改善されました。
また、全体的に結構的なみずみずしい質感になったと感じます。

 

まとめ

今回の工程をまとめると以下の通りです。
※ 実施しなかった工程をグレーアウトし、②④も今回の内容にカスタマイズしています

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①……ロウ分が殆ど乗っていなかったので、革が傷むのを防ぐため実施せず、
②……保革はデリケートクリームに加えてサフィールレザーローションで行い、
③……新しい靴のため補色はせず、
④……レザーローションで全体の艶だし、油性靴墨でつま先のつや出しを行いました。

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今回使用した道具。
左から、モゥブレイデリケートクリームサフィールレザーローション
KIWI パレードグロス(無色)

 


今回は「ライトブラウン編」という題名をつけましたが、
ブラック編やダークブラウン編があるのかは微妙なところです^^;

というのも、濃色の靴はステインリムーバーでも色落ちしにくいですし、
初めから乳化性クリームをガシガシ使って保革&補色をしたところで、
色ムラになることも少ないからです。

とはいえ、何を目的にその工程を踏み、
どういう効果を狙ってその製品を使っているのかを把握することが、
靴を永く使うため、美しく履くために重要なことだと考えています。

 

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