小ネタ

ファッション好きはみんなナルシスト?

投稿日:平成31年(2019) 3月24日 

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先日電車の中で、男性2人組の会話が耳に入ってきました。曰く、「ファッションに興味のある奴って、大抵ナルシストだよね」と。

その時は、良くあるステレオタイプな意見だなぁと聞き流していました。しかし、後日気になって会社の同僚や友人にこの話をすると、「確かに……」という意見が多かったのです。

ということで今回は、ファッションが好きな人、興味がある人ってナルシストなの? を考えてみました。

1.ナルシストって

心理学や精神分析を扱うサイトではないので定義は辞書から引用します。

ナルシシズム【narcissism】

① 自分の容姿に陶酔し、自分自身を性愛の対象としようとする傾向。自己愛。ギリシャ神話のナルキッソスにちなむ精神分析用語。

② うぬぼれ。自己陶酔。

(三省堂『大辞林』第三版より)

本項のナルシストとは、①の自己愛だけでなく、②の広義のナルシシズム(ナルシズム、ナルチスムス)である自己陶酔、うぬぼれが強い人のこととします。

世間的にはあまり良い意味では使われず、ビジネス的にもネガティブなレッテルでしかありませんよね……。

 

2.ファッションに気を遣う目的

ファッションが好きな人や興味のある人はナルシストなのか。まずはファッションに気を遣う目的から、考えてみることにします。

①ビジネスのメリット

ビジネスの現場で人と接する際に、より安心感や信頼感を与えるため、ファッションに気を使っているという方は多いと思います。

「人を見た目で判断してはいけない」と言われるのは、多くの人が見た目で他人の信頼性や性格を判断するからです。

(職種上、やむを得なかったりそれが普通である場合をのぞいて)だらしない恰好や、不潔な恰好、場にそぐわない恰好は、もし中身がよい人であってもビジネス面で不利になることは明らかでしょう。

従って、ファッションへの興味がビジネス上のメリットを受けることのみが目的であるならば、それはナルシストではないと思います。

自由業や経営者の派手な格好は?

テレビタレントや、自身が広告塔の役割を果たす経営者などは、人に覚えて貰うため、また目立つために一般的に見ると過剰なまでに着飾ることがあります。

人によっては、これを「うぬぼれ」に感じるかも知れませんが、ほとんどの場合「注目を集める」ことはあくまで手段で、目的は自身や自身の会社の商売繁盛です。そのため、それだけを取り上げてナルシストであるとは断定出来ないと思っています。

②プライベートのメリット

では、私生活においてファッションに気を使う場合はどうでしょう。

例えば友人や恋人、その他私生活で接する人々と円滑にコミュニケーションを図るために、①と同様の理由で最低限の身だしなみは必要だと思います。

ただ①と異なるのは、異性からの関心を引きたいとか、同性に対する見栄のためにファッションに気を遣うケースがあることです。

もちろん、目的は「異性と仲良くなる」や「同性に対して優位に立つ」ことで、自己陶酔やうぬぼれとは関係ないこともあるでしょう。しかし、実際には「異性から関心を引いている状態」「同性に対して見栄を張っている状態」を維持したいという、ナルシズムに繋がるパターンもあるのではないでしょうか。

③自己満足

ビジネス上、またはプライベートにおけるメリットとは関係なく、自己満足としてファッションに気を遣うパターンです。

逆に、①や②は邪道であって、③の自己満足こそがファッションだという意見もあることでしょう。

「服は自分が着たい物を着るべきだ」「ファッションは自由だ」と、かなり手垢の付いた表現ではありますが、ファッション好きを自認する人こそ、この意見が多いと思います。

自己満足でファッションを楽しむ人は全てナルシストなのか

そこで問題になるのが、自己満足でファッションを楽しむ人が、ナルシストに該当するかです。個人的には、自己満足の先にある目的は何か、という点を考えるべきだと感じています。

例えば、とあるジャケットを着た時に、「なぜそのジャケットを着るのですか?」と問われ、

  1. 見た目に無関係な答え:「寒いからです」「着心地が良いからです」
  2. 見た目と関係する答え・A:「この色や質感が好きだからです」
  3. 見た目と関係する答え・B:「この色や質感が自分に似合うと思ったからです」
  4. 見た目と関係する答え・C:「この色や質感のジャケットを着ている自分が美しいと感じたからです」

この様な回答が考えられたとします。

1は、単純に機能面を回答しているので今回の問題に該当しません。

一方で、2~4は異なるように見えて、実は程度問題だったり質問を繰り返すと出てくる話だったりします。

例えば、

Q「なぜそのジャケットを着るのですか?」
→ 答え・A「この色や質感が好きだからです」
→ 更問「なぜその色や質感が好きなのですか?」
→ 答え・B「この色や質感が自分に似合うと思ったからです」
→ 更問「なぜその色や質感が似合うと思うのですか?」
→ 答え・C「この色や質感のジャケットを着ている自分が美しいと感じたからです」

こんな具合です。

他人からどう見えているか

また、重要なポイントとして「他人から見るとナルシストに見える」という問題があります。

一つは、自分としては前項の答え・Aまでしか自覚していないが、客観視すると(他人から見ると)答え・Cまで行っている、というパターン(深層心理ではBやCが根っこにあったというパターン)。こちらは簡単ですね。

厄介なのは、BやCが根っこになく、かつあくまでファッションは①のビジネス上のメリットだけだと考えていても、他人からはそう思われないパターンです。

そこで最後に、そう思われる可能性のある「ファッションに気を遣う程度」という観点を考えてみたいと思います。

 

3.ファッションに気を遣う程度

たとえ、自己陶酔やうぬぼれ以外の、明確な目的がファッションにあったとしても、他人からそう思われてしまう可能性があるのも事実です。

そこで、ファッションに気を遣う程度について、ビジネスシーンを前提に考えてみます。

身だしなみ

ビジネス上のファッションとして基本になるのが、清潔感を保つ身だしなみとしてのファッションです。

靴やスーツが汚れていないか、サイズは合っているか、そのシーンに相応しいアイテムかどうかなど、ビジネスにおけるファッションの基本部分ですね。

このレベルであれば、例えば30分おきにトイレへ自分の衣服を確認しに行くなどの、よほどの「異常行動」がなければナルシスト認定はされないと思います。

差別化

それでは、他人より少し華やかにしたり、あるいはクラシカルにしたりと、「仕事を任せられる信頼感」や「リーダーとしてのカリスマ性」のために多少他人と差別化する程度はどうでしょうか。

もはや人によって感じ方は千差万別ですし、差別化の程度にもよるので断言はできませんが、「よく見るとお洒落だな」程度の差別化であれば認定はされないと考えます。

一方、常時周囲から浮く位の差別化をしてしまうと、それが本人にとって明確なビジネスのための目的があったとしても、他人からはナルシストだと思われる危険性があります。

オタク化

差別化とはまた違った観点での程度として、オタク化があります。

第三者が見ると、その違いが僅か/分からない、または理解しにくいが、かなりのこだわりをもってファッションに気を遣うレベルです。

例えば「この靴は○○社の稀少カーフ素材だ」「靴磨き命」「このジャケットの生地は○○羊の○○ミクロンの生地で仕立てた」等です。

興味の無い人にこの手の話を振ると、ろくな事はありません。(長くなったのと、闇が深そうなので^^;需要があれば別途考察しようと思います)

「ぁ……服オタなのね」と思われるだけなら良いですが、最悪「自分を飾ることしか興味の無い人なのね」と思われる可能性があります。

 

4.おわりに

結局、ファッションが好きな人やファッションに興味がある人は、自己陶酔やうぬぼれている(ナルシストな)のでしょうか。

たとえば(信頼感の醸成とか)ビジネス上の何らかの目的を達成するため「だけ」に、道具としてのファッションに興味を持っている場合は、おそらく違うと思います。

一方で、ファッションそのものが趣味や目的となっているケースは、(程度の差こそあれ)その可能性があると思います。

また、他人からの視点でいうと、ファッションを道具として見ている場合であっても、先述の通り程度によってはナルシストに見なされる可能性があることに注意すべきでしょう。

私自身は……?

ただ、身もフタも無い話ですが、自己陶酔やうぬぼれが一切無い人っているのでしょうか?

厳しい修行を積んだ宗教家ならいざ知らず、多くの方に、その大小は別として、ナルシズム(的な)要素をファッションに感じ求めているのでは無いでしょうか。

かくいう私も、「ビジネスで信頼感を醸成するためだ」と言いながら、(合目的性を超えた)珍しい生地を見つけてはテーラーに「これ、似合いますかね^^」なんて言っています。

また、素材や縫製など、「実」以外の(ここでは元々の悪い意味での)「こだわり」をファッションアイテムに求め、またそれを手にしてニヤニヤします。(客観視すると気持ち悪い。)

従って、「2.ファッションに気を遣う目的」でいう「③自己満足」や、「3.ファッションに気を遣う程度」でいう「(すこしやり過ぎた)差別化」や「オタク化」の傾向も見られるわけです。

……うーん。気をつけねば。

ファッションとは自己陶酔やうぬぼれ?

極論ですが、「趣味のファッション」を言い換えると、そういった「(若干の)自己陶酔やうぬぼれを楽しむこと」に繋がるのだと感じています。

しかし、やり過ぎは、大きなデメリットをもたらす可能性があるということを、肝に銘じるべきだと思いました。

 

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