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サスペンダー(ブレイシーズ)の着こなしを考える

投稿日:平成29年(2017) 1月29日  更新日:令和2年(2020) 3月9日 

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皆さんはブレイシーズ(サスペンダー、ズボン吊り)を使っていますか?

ここ最近、ファッション雑誌で取り上げられる事が多くなったブレイシーズ。セレクトショップや流行に敏感なテーラーなどでも店頭に置かれ、売り上げが増えているようです。

ブレイシーズは、個人的には大好きなパーツです。しかし、見慣れない人にとってはインパクトが強く、本格的に流行ることはないのでは……とおもいつつも、それでも使ってみたいという物好きな方向けに、今回はブレイシーズの着こなしについて考えてみようと思います。

1.サスペンダー(ブレイシーズ)とは

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まずは基本的な部分からおさらいします。(例によって、ご存知の方は読み飛ばして下さい。)

ブレイシーズとは、ズボンなどがずり落ちないようにするために、肩でつり下げるための服飾用品です。

イギリス風にいうとブレイシーズ(braces)、アメリカ風にいうとサスペンダー(suspenders)、日本語ではズボン吊りです。(ブレイス、サスペンダーズとは何故か書きません。。。)

本来は、股上が深くゆとりのあるズボン向け

現在、トラウザーズ(ズボン)を留める道具としては、多く場合ベルトが使われています。

とはいえ、ベルトが無くても、ズボンが落ちないことが正しいサイズとされており、ベルトはもっぱら「飾り」と言っても差し支えないでしょう。

しかし、かつてのズボンはそこまでタイトではありませんでした。今よりもウェストが太く、太もものわたりも広く、そして股上が深めでした。この状態ではブレイシーズ無しでは、簡単にずり落ちます。

なお、そういった昔ながらのズボンを、無理矢理ベルトで留めると、プリーツ(ズボンのヒダ)やクリース(プレスした織り目)が綺麗に出ず、もちろん、裾のクッション(靴の上に乗るズボンの裾)も一定では無くなります。

ブレイシーズを使う理由

3年くらい前から、クラシックスタイルのブームが続いています。三つ揃い(スリーピース)や英国調の生地の流行などに、その一端を見ることが出来ます。

ブレイシーズの流行については、実用的な道具としてではなく、クラシックスタイルブームの一環として、引っ張り出された感があります。

ただし、まだまだ街中で見かけることは少ないのも現実です。社内でも(肥満体型の方を除いて)ブレイシーズを使っている人の割合は極端に低いでしょう。そのため、お洒落への有効なアイテムになる一方、使い方を間違えると、道化に見えてしまう恐れもあります……。

現代でも実用面のメリットはある

もう一点、実用面のメリットは、いまでもあることは知っておくべきだと思います。

歩いたり、座ったり、食事をして腹が出たりと、私たちの体やウエストは常に動いています。これでは、幾らサイズが合った現代のズボンでも、ウェスト位置は少しずつずれていきます。

つまり、昔ほどではないものの、今でもズボンは下がりがちのパーツというわけです。そこで、ブレイシーズを使うことで、スタイルを綺麗に保つことが出来ます。

特に、三つ揃い(スリーピース)でウェスト位置が下がると、ウェストコート(ベスト)とズボンの間からシャツが見えて、この上なく間抜けに見えます。こういったときに、ブレイシーズは実用面からも有効なのです。

 

2.基本は隠す

それでは、いよいよ着こなしの本題に入ります。1つめのポイントは「隠す」です。

装飾としてブレイシーズを持ち出したのに、隠すというのはどういうことでしょうか。

そもそも見せるパーツではない

大前提としてブレイシーズは「見せるパーツではない」ことが挙げられます。もう少し書くと、「見えてしまうかも知れないが、能動的に、おおっぴらに見せるパーツではない」という表現が正確でしょうか。

ドレススタイルにおけるブレイシーズは、常にウェストコート(ベスト)の下に隠れており、見せるための装飾では有りませんでした。この思想は現在のビジネススタイルでもあまり変わりません。立ち位置としてはジャケットの裏地や、ホーズ(ソックス)に近いのではないでしょうか。

なお、カジュアルスタイルにおけるブレイシーズは、労働着の変化系など、場合によっては見せる前提もアリだと思います。ただ今回は、私たちビジネスマンの、オンのスーツスタイルを前提にしています。

クリップ式の場合は留める位置に注意

そのため、クリップ式であれば、正面2カ所の留める位置に注意します。基本的には、ズボンのプリーツの上あたりに取り付け、ジャケットのボタンをすこし開けても、簡単に見えない位が良いでしょう。

ボタン式であっても、ボタンを自分で取り付ける場合には 同様の注意か必要です。

この様にブレイシーズは、「表地は地味だけど裏地は派手なジャケット」と同様、見せつけるお洒落では無く、意図せず見えた際のお洒落という、そういう類のものだと感じます。

 

 

3.初めてこそ、三つ揃いと合わせる

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ブレイシーズはなんだか気恥ずかしくて……とか、ブレイシーズはどんな使い心地か試してみたいという方にオススメなのが、三つ揃いを着てしまうことです。

写真のように、三つ揃いであれば、ブレイシーズの大部分は見えなくなります。

写真のウェストコートは腕のカーブが浅いため正面からは余り見えませんが、型によってはブレイシーズが正面からでもすこし見えるタイプもあります(また、ブレイシーズの太さも影響します)。色々と試してみてください。

 

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しかし、少し派手目のブレイシーズなら、腕を動かしたときなどにチラチラと見えるのです。

前述の通り、三つ揃いで重要なズボンの位置もしっかり固定され、またベルトバックルでウエストコートの裾が盛り上がることもありません。ブレイシーズによって、三つ揃いそのものも美しく着こなすことが出来るわけです。

 

4.ブレイシーズの色合わせ

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写真のように、ブレイシーズには様々な色や柄があります。(私は保守的な色柄が好きなので、上記写真はこれでも地味な方です。水玉や花柄、風景やドクロ柄などの派手なブレイシーズも市販されています。)

そこで、どんな色合わせがあるのかを考えてみます。

基本はネクタイやシャツ

まず思いつくのはネクタイでしょう。紺系のタイに紺系のブレイシーズを、赤系であれば赤系を、といった具合です。

また、シャツとの色柄合わせも良いでしょう。水色と紺など同系色のグラデーションにしたり、水色と茶色など、相性の良い色でまとめたり出来ます。

ただし、ネクタイとシャツのコーディネート同様、柄物同士の衝突には配慮する必要があります。(例:ストライプシャツにストライプのブレイシーズなど。幅に気をつけるかそもそもストライプ同士を合わせないようにするなどします。)

オススメはスーツの裏地

個人的にオススメなのは、スーツの裏地の色とあわせてしまう事です。これには2つの大きなメリットがあります。

1つめは、チラッと見えたときに粋であること。タイやシャツは「合わせました感」が強いですが、ジャケットの裏地であれば、自然な感じになります。

2つめは、楽であること。忙しい朝、シャツやタイに合わせてブレイシーズを取り替えることを想像してみて下さい。面倒ですよね? 裏地に合わせことで、ズボンに取り付けたブレイシーズは取り外し不要になります。(その代わり、ズボン毎にブレイシーズが必要になりますが……。)

また、股上の深さが違うズボンがあると、取り外しだけで無く、ブレイシーズの長さを一々調節する必要がありますが、これも省くことが出来ます。

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▲ 緑の裏地と、緑のトラウザーズを合わせています

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▲ タイも含めて、茶色で統一した様子

 

5.素材を見極める

伸縮性

ブレイシーズには、大まかに分けて、全体が伸縮性の素材で作られたものと、伸縮性がない素材が大部分で作られたものの2種類があります。

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写真はどちらも英アルバートサーストン社製のブレイシーズで、裏地が白くなっているのが伸縮性素材の部分です。青いブレイシーズ(左)は背中部分の一部だけ、緑のブレイシーズ(右)は全体が伸縮性素材で作られていることが分かります。

個人的には、エラスティック素材(ゴム)の香りが苦手なのと、安定感や織り柄の美しさから、左側のタイプの方が好みです。一方、体を動かすことが多い方は、伸縮素材の方が良いかも知れません。

織り

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こちらは、左側のブレイシーズの写真です。よく見ると、細い横縞の畝が見えます。グログラン(grosgrain)という平織りの一種で、厚手で手触りの良い生地です。

単色でも、織り柄が美しい物が多く、一番オススメのタイプです。

グログラン:経糸に細い糸を、緯糸に太い糸を使っておられた平織物。元々は絹織物でしたが、このブレイシーズを含め、現在では殆どレイヨン等の化学繊維(再生繊維)か、その混紡生地が使われています。

 

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こちらも伸縮性の無い、オックスフォード(oxford)と呼ばれるタイプのブレイシーズ。メーカーは同じアルバートサーストンです。

グログランよりも若干薄手で、プレーンな印象です。

 

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こちらはエラスティック(Elastic)タイプのブレイシーズ。アルバートサーストン社製です。前項の伸縮性の度合いでいうと、全体が伸縮するタイプのブレイシーズに使われます。

見た目はプレーンなオックスフォードタイプに似ていますが、幅が若干狭く、さらにモダンな感じです。

そのほかにも、古典的なフェルト(ボックスクロス)タイプのブレイシーズ(礼服向けで日常的には使いづらいかもしれません)や、カシミア、ツイード、シルク素材など様々な種類があります。

織りの項目でも少し触れましたが、ブレイシーズは、帯の幅によっても印象が大きく変わります。

中心となる幅は概ね3cm~4cm程度。これより太いとスコティッシュかチロリアンの民族衣装ぽくなり、細いとモードっぽく、または安っぽかったり貧相に見えます。

スーツ用としては3.5cm~4cm位が、個人的にはオススメです。

 

 

6.ボタン留めとクリップ留めのどちらが良い?

ブレイシーズを選ぶ上で、もう一つ重要なのはズボンへの固定方法です。一般的には、ボタン留めとクリップ留めの2種類の方法があります。

基本的にはボタン留めが美しくオススメ

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古くからある方法がボタン留めです。ズボンのウエスト部分に附属のボタンを縫い付け、そこにループを引っかけます。(ズボンを作るとき、予めテーラーに付けて貰うのがオススメ。)

ボタンが無い場合には、手間のかかる方法です。しかし、クリップが外れたり、生地を傷める心配が無く、使用感も安定しており、なにより見た目にも美しいのでこちらの方がオススメです。

なお、ボタンの取り付け方については、以前の記事で取り上げましたので、興味のある方は参照して下さい。

簡単なクリップ留め

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ボタンの縫い付けが面倒という場合には、クリップ留めを使う方法が有ります。

手軽に使えますが、すこしインスタントな感じもします。

両用式を買うのも手

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ボタン式にするかクリップ式にするか決まっていない、どちらでも使いたい等という場合には、若干割高ですが両用式を買うのも手です。(むしろ、日本に正規輸入されている製品の殆どが、クリップ式か両用式だったりします……)

 

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先ほどの写真のブレイシーズからループを取り外し、クリップ専用にしたのがこちら。

 

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クリップを取り外し、ループを取り付けたのがこちら(左)。参考までに右がボタン留め専用のブレイシーズです。

 

7.よく使うブレイシーズ

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ここまでご覧の方はもうおわかりかも知れませんが、個人的にはイギリスのアルバートサーストン社製ブレイシーズ一択の状態です。

所有しているブレイシーズも、アルバートサーストンか、同社をOEM提供元とした他ブランドのブレイシーズばかりという状況です。

オススメの理由はいくつかあるのですが、主なところでは、「①色柄のバリエーションが多い、②耐久性が高い、③クラシカルなデザインが多い」点です。

私はボタン留めが殆どなので上記には入れていませんが、「④ボタン/クリップ留め両用がある」も、ポイントです。

皆さんのオススメブランドがもしありましたら、コメントから是非教えて下さい。

 

購入方法

現在、正規代理店の同社ブレイシーズの多くが、両用式かクリップ式のみのようです。Amazonで種類が豊富にあるので、初めてのかたはまずはこちらを1つ購入してみるのが良いでしょう。

数を揃えたい場合、並行輸入の安価なボタン式専用もオススメです。特に、アルバートサーストン社からOEM提供を受けている製品であれば、(為替レートにもよりますが)価格も6~7割程度と安価に購入出来ます。

 

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