サラリーマンのファッションを考える


スリーピーススーツのよくあるNGとその対処

   

LINEで送る
Pocket

_MG_8211

量販店の店先にディスプレイされるまでに一般的になったスリーピーススーツ(三つ揃い)。街中でも2~30代の若年層を中心に、着ている方を多く見かけるようになりました。

と同時に、それは少し違うのでは……とか、もう少しこうすれば格好良くなるのに……といった姿が多くなったのも事実です。

今回は、三つ揃いを着る上でよく見るNGポイントと、その改善方法を考えてみたいと思います。

 



1.ズボンとベストの間からシャツが見える&溢れる

_MG_8197

本来、シャツは見えてはいけない

ウェストコート(ベスト、ジレ)とトラウザーズ(ズボン)の間からシャツが見えていませんか?

スーツスタイルにおけるドレスシャツは、原則として襟(Vゾーンを含む)と袖以外は露出しません。ジャケットやウェストコート、トラウザーズで隠す必要があるからです。

しかし、いくつかの理由で、お腹や背中の部分からシャツが見えたり溢れたりします。そうすると、とてもだらしなく見えますよね……。

ウェストコートの丈、トラウザーズの股上と胴回りを確認

その原因がスーツにある場合、次の3点が理由である事が多いです。

  • ウェストコートの丈が短い
  • トラウザーズの股上が浅い
  • トラウザーズの胴回りが大きい

1点目は、ウェストコート……つまり上側から、2点目と3点目はトラウザーズ……つまり下側からの長さが足りないパターンです。

特に、3点目は「トラウザーズがずり落ちる」→「シャツと一緒にたくし上げる」→「ウエストにシャツが余る」という悪循環を生むので、注意します。

主な対策としては、試着時(オーダーの場合は仮縫時)に、それぞれのサイズが合っているかを確認します。特に、試着しながら立つ・座るの動作をすることで、シャツやトラウザーズがどの様な動きをするかを見定めると良いと思います。

なお、3点目についてはブレイシーズ(サスペンダー、ズボン吊り)を使う事でも解消することが出来ます。詳細は過去のエントリー「ブレイシーズ(サスペンダー)の魅力を考える1」を参照して下さい。

そして、この3つ以外にもシャツを原因とする場合もあります。

シャツのサイズも確認

  • 胴回りが余っている
  • 着丈が短い

1点目は想像がつくと思います。胴回りに余裕がありすぎて、シャツが溢れてしまうというパターンです。

一方で見落としがちなのが2点目。トラウザーズにシャツの裾が隠れているだけで良いのでは? と思われがちですが、それだけでは裾がきちんと固定されずにシャツが移動してしまうのです。

シャツの着丈は、側面が股の位置位まで十分あると安定します。シャツを試着したりオーダーするときはこの辺りにも気をつけて下さい。

裾を出して着るタイプのカジュアルシャツは、この様な理由からタックインには適していません。従って、タックイン・アウト両用というのは、まさに二兎を追う者は一兎をも得ずなシャツになります。(そもそも、裾の形からして異なります。。。)

 

2.胴回りが合っていない

ボンレスハム or プールポアン

ウェストコートの胴回りは、遊びが少ないため、ジャケット以上にサイズがシビアです。

そのため、サイズが小さくてボンレスハム状態に、または大きすぎてルネサンス期のプールポアン(下の写真)みたいな状態を見かけることがあります。

16121701
▲ プールポアン。ダブレットともいう。ウェストコートの原型。出典:丹野 郁(2003)『西洋服飾史 図説編』東京堂出版

座った状態で少し張るくらいが丁度良い

初めてウェストコートを着ると少し窮屈に感じるかも知れません。しかし、それが寸足らずで窮屈なのか、初めての衣服故に感じたことなのかを見極める必要があります。

本来は店員のアドバイスが重要なのですが、念のため自分でも確認出来るようにします。ポイントは、座ったときの見た目です。

ウェストコートを試着したときは、椅子に座るようにして下さい。このとき「ボタン回りにシワが出ない位でぴったり」が丁度良いサイズです。立った状態でピッタリだときつめで、座ったときにゆとりがありすぎると、立ったときに不格好になります。

尾錠による調節は限界あり

_MG_8197 (2)

ウェストコートの背中には、サイズを調節するベルトがあり、尾錠と呼ばれています。

知人がスーツ量販店で大きめのウェストコートを試着した際、販売員に「尾錠で調節がきくから大丈夫ですよ」と説明されたそうです。果たして本当でしょうか。

「大きめ」の程度にもよりますが、尾錠による調節について過度な期待は禁物です。理由は以下の通りです。

  • 調整の範囲が限定的である
  • 動くと元に戻ってしまう事がある
  • 副作用がある

1点目は調整範囲が限定的であること。尾錠は、ベルトを使って背中のたった2点を寄せる機能です。従って、その2点を寄せただけでは胴回りの一部のだぶつきは解消出来るかも知れませんが、みぞおちよりも上については、効果が及びにくいのです。

2つめは、尾錠の多くに固定具が無く、かつベルトの素材が滑りやすいベンベルグ(キュプラ)やポリエステル繊維であることによります。せっかく調整しても、動いている間にベルトが元に戻ってしまうのです。

最後は、しめすぎると背中に醜いシワが寄ってしまったり、胸部分の余りが強調されてしまうということです。

従って、基本的には尾錠に頼らず、サイズがあったウェストコートをえらぶ、または作る必要があると考えます。

 



3.袖ぐりがブカブカ

_MG_8191

胴回りはウェストコートのサイズ合わせにおける基本ですから、試着をきちんとすれば間違いは無いと思います。

しかし、ウェストコートのサイズ合わせで見落としがちなのが袖ぐり(アームホール)です。

サイズ感は合っているように見えるけど、どうもしっくりこない……というとき、袖ぐりのだぶつきというパターンがあります。

脇と肩を見る

1つ目の確認ポイントは脇です。ここのだぶつきは、胸回りや腹回りの調節では取れにくく、意識して脇下の布の余りを確認する必要があります。なで肩の人に多いと思います。

 

_MG_8190

2つめは肩です。上の写真は(撮影者の意図的な演出もあって)極端な例ですが、こちらもなで肩の人に多いだぶつきです。

試着を繰り返し、これらの問題が出にくいサイズやパターン(型紙)の製品を見つけることが出来るかも知れません。しかし、体型によってはオーダーや直しが必要になることもあるでしょう。

オーダースーツの場合は袖ぐりや襟回りの調整で、吊しの場合は購入後の直しで修正をかけることになります。ただ、補正によって別の部分に出る副作用まで見越した指示や調整が出来る、知識や経験に優れた店や店員を見つける必要があります。

私の経験としては他の部分を詰めた時(確か襟か脇下だった気がします)に、副作用として肩部分のせり上がりが出てしまったことがあります。別の店では、テーラーが副作用(しかも複数の)まで先読みして補正指示を出していたこともあり、知識と経験が大事な部分なのだなと感じました。

 

4.背中が派手すぎ

_MG_8198

上の写真は無難なシルバーですが、派手な色やブランドロゴの入った悪目立ちする物も良く見かけます。

オーダースーツに多いミス

これまでのNGポイントは多くがサイズ問題に起因するため、きちんとした採寸と補正が行われたオーダースーツには起こりづらい問題でした。しかし、この項目は逆にオーダースーツで起こりやすい問題です。

オーダースーツになれてくると、個性を求めてジャケットに派手な裏地を付けたくなることがあります。裏地だけなら「チラリズム」などと称して自己満足の世界に浸る事が出来ます。しかし、問題はジャケットの裏地と、ウェストコートの背中は同じ生地を使うと言う点です。

ジャケットに派手な裏地を使ったばかりに、ウェストコートの背中も派手に……そして社内で着られなくなった。なんて話を、知人やテーラーからも良く聞きます(そして、恥ずかしながら私の自身の記憶のなかにも……^^;)。

実は別布を指定できる

多くのテーラーで、ジャケットの裏地とウェストコートの背生地は別地を指定できます(ただし、追加料金を取られることもあります)。

ジャケットに派手な生地を使う場合、そのままウェストコートの背に使っても大丈夫か、はたまた別の生地を使うべきか、今一度確かめてみましょう。(背中は思ったより広く、会社でフロアの遠くからでもかなり目立ちます。)

 

5.シャツの襟が飛び出している

_MG_4811

最後に、シャツに起因するNGを。上の写真は、ウエストコートの上にシャツの襟が出てしまった状態です。マナー違反というわけではありませんが、見た目に美しくありません。

シャツの衿型が合わなかったのも原因の一つですが、一番大きいのはシャツの襟がきちんと胸の上に載っていないからだと思います。

衿型と襟の密着度合いを確認する

_MG_8214

こちらの写真は、ワイドカラーのパターンです。襟がきちんとおさまっています。

 

_MG_8218

めくってみると、襟羽根がウェストコートの裏側で固定されている事が分かります。また、そもそもシャツの襟がしっかり密着する仕立てになっています。これなら飛び出ることもありません。

三つ揃いを着るときには、シャツの襟がウェストコートに適しているかを確認すると良いでしょう。

以前、記事へのコメントで、三つ揃いにナロー幅のロングポイントカラーをあわせいるという方がいらっしゃいました。逆転の発想ですね。長身の方でクラシカルな襟が好みであれば、ワイドカラーよりも似合うと思います。

 

6.おわりに

さんざんNGポイントを書いてきましたが、実はその多くが(程度の差こそあれ)私も犯してしまったポイントでもあります。そのため、他人を見ているときに気になってしまうのかもしれません。

しかし、ウェストコートの「なんとなくしっくりこない/似合わない」は、些細なNGポイントの積み重ねが原因であることが多い様に思います。

これからも、私自身試行錯誤を繰り返しながら、改善を続けていきたいと思います。

 

 

 - スリーピース , , , , , , ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▼「いいね!」をすると、新しい記事の更新通知を受け取ることが出来ます

  関連記事

コメントの投稿

6 コメント on "スリーピーススーツのよくあるNGとその対処"

並び順:   最新 | 最古

サイズ感が超シビアなベストこそ、オーダー一択じゃないでしょうか。
ニットのように伸縮性があるものなら既製品でもいいのですが、(←これは個人的にgimのニットベストをお勧めします。去年のベストバイで、今年も大活躍中です。私は見てませんが「逃げ恥」で星野さんも着ていたとか…)それ以外の場合なら、身幅も丈もぴったり、というのは、どんな体型の人でもなかなか難しいと思います。

背中の生地についてですが、私の場合最近は共生地で作ってます。ベストは本来そういうものなんだよ、ということが浸透していない職場なので、どうしてもポリエステルやキュプラではテカテカして派手で、「おい、お前何結婚式みたいな格好してるんだ?」なんて言われちゃうんです(泣)。

いつも楽しく勉強させていただいております。
ありがとうございます。

スリーピースでシャツの襟先が、ベストに隠れていないのはカッコよくないと学ばせていただきました。

そこで質問です。
スリーピースを着る際にタブカラーやピンホールカラーのシャツを着ると、
シャツの襟先はベストに届かずにおさまりません。
スリーピースの際はやはりワイドカラーなどを選ぶべきなのでしょうか?

恥ずかしい話ですが、私自身はスリーピースにタブカラーやピンホールカラーでもカッコいいと思って着てました。

正しい知識を教えていただきたいです。
よろしくお願い致します。

Shichilie様

懲りずにコメントをさせていただきます。

シャツの襟がウエストコートの上側に出てしまう…
その解決策の一つとしてワイド・カラーのシャツを…という
選択が少し残念です。

アラン・フラッサー氏の言葉を借りるまでもなく
「頭と顔の大きい日本人がワイド・スプレッドの
 シャツを着るなんて滑稽だよ。」

滑稽!

そう、同じように顔のでかいアラン・フラッサー氏は
滅多な事ではワイド・スプレッドを着ておりません。
レギュラーか、もしくはロング・ポイントでした。
スリー・ピースを愛用する同氏はその選択をしておりました。

因みに私が知り合いのシャツ職人に作っていただいている
ロング・ポイント・シャツの襟の剣さきはウエストコートの
内側に綺麗に折りこまれます。
微妙なカーヴを描いているそれは、魔法のように畳まれます。
本物の職人の成せる技です。
しかし、その方も高齢でいつ、リタイヤするかも
分かりません。
それを考えると憂鬱になります。

wpDiscuz